マーケティング

飲食店がECサイトを立ち上げるとき、押さえておきたいポイント4選

2020年の新型コロナウイルス感染症の蔓延は、飲食店にも休業や営業時間短縮など大きな影響を与えました。多くの店舗が業績を下げましたが、通販やデリバリー、テイクアウトなどの業態変化にうまく適応することで明暗が分かれてくる可能性もあるでしょう。

そこで今回は、通販事業に焦点を当て飲食店がECサイトを運営する方法や応用をご紹介いたします。

飲食店でECが盛んになっている理由

具体的に、ECに参入するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。またメリットがあれば、デメリットもあって当然です。このメリット・デメリットについてまとめてみました。

飲食店がECを始めるメリットについて

店内飲食とは違い、立地や店内の席数に売上が左右されないのは大きなメリットです。また、実店舗があることにより、ECのお客様を店舗に誘導できる、逆に店舗のお客様をECに流せるというのも売上に貢献します。さらに、店舗とECとで同じ商品を販売すれば食材のロスを減らせる点も見逃せません。

飲食店がECを始めるデメリットについて

新たに商品を開発しなければならない点がデメリットとなります。店舗で販売している商品がそのままECで使えるのであれば問題ありませんが、そうでなければ大きな負担となるでしょう。また、サイトの立ち上げを含め、一からシステムを作っていかなければならない場合もあります。設備の点でも、通販用に投資が必要となる場合もあります。新たな作業が大量に発生しますので、スタッフにも新たな負荷がかかります。

同じ飲食物を扱うといっても店舗営業とECではまったく別ものといってもよいくらい違いがありますので、新しく店舗の立ち上げをするくらいの認識を持っていたほうがよいでしょう。

ECで何を売ればいいの?


ECで商品を販売する場合、デリバリーやテイクアウトとは勝手が違います。店舗営業とは別ものと考えて、準備を進めていきましょう。

保健所に相談してから決める

普段店舗で提供しているものであっても、ECではそのまま販売できないものもあります。食品の種類によっては、店舗とは別の営業許可書が必要だと食品衛生法で規定されているからです。菓子類であれば「菓子製造業」の営業許可書が必要です。施設基準もありますので、場合によっては改修を含めた新たな設備投資もしなければなりません。

このことから、本格的な行動を起こす前に保健所に相談することをおすすめします。

EC販売用の商品に必要なこと

ECで販売する商品には、店内飲食では不要だったものが必要となります。販売を開始してから用意するのではなく、事前に準備を整えておきましょう。

常温・冷凍・冷蔵、販売に最も適しているのは

EC販売が店舗販売と大きく違うのは、お客様の手に渡るまでの移動距離と口に入るまでの時間が長いことです。また、配送中の状態もこちらで管理することはできません。
そこで一番に考えなければならないのが、どのような状態で商品を出荷するかです。
最も理想的な商品は、常温で出荷できて、かつ賞味期限が長いものです。腐敗というリスクが少なく、店舗側の設備投資や在庫負担が少なく済むからです

次に良いのが、冷凍品です。これも腐敗リスクが少なく長期保存がしやすいので、ECを新たに始めるにあたって比較的導入しやすいでしょう。
ただし、冷凍や保存のために新たな設備投資が必要になることがあるので、その点は計算に入れておく必要があります。

もっとも管理が難しいのが、冷蔵品です。通常は賞味期限が短いため、衛生管理や在庫管理などで製造工程が煩雑になります。

また、冷凍・冷蔵品の場合は、送料も高くなってしまいますので、コスト負担が利益を圧迫することも忘れてはいけません。

パッケージで気をつけるべきこと

すべての商品で必要なわけではありませんが、中身の漏出や異物・雑菌の混入を防ぐためには真空パックをするのがおすすめです。最近では、業務用であっても比較的安価で入手できるようになっていますので、商品や出荷頻度などを考慮したうえで購入を検討してください。

さらに大事なのは「食品表示ラベル」です。これは食品表示法により義務付けられていて、製造元や賞味期限など必要項目を記載した物を商品に貼付しなければなりません。

外箱やすき間を埋める緩衝材なども用意する必要があります。配送中に商品に傷がつくなどした場合には、クレーム・返品の対象となります。これに対応する時間的・金銭的なコストを避けるというだけでなく、今後リピートしてくださるかもしれないお客様を逃さないためにも、商品が良い状態でお客様に届くよう対策をしておきましょう。

商品が売れて、利益をあげるためには

他にも多くの商品がある中で売れるためには、お客様の目に留まることが重要です。もちろん、それは簡単なことではありません。しかし、これから販売しようと思っている商品がありきたりのものであるならば、何かしらの変更をしたほうがよいかもしれません。以下の方法を試して、目立つ商品にしてみてください。

まずは、自社の商品と似たような商品をインターネット上で探してみましょう。そこで上位表示されている商品は何かしらの理由があり、人気があるとされています。ですから、その理由を探ってみましょう。またECモール内でも、人気商品が発表されています。
これらもなぜ人気があるのか、売れているのか原因があるはずです。
ECを始めるにあたって市場調査は必須事項となります。

商品をどれだけの大きさ・量で販売するのかも重要です。単価が低い商品は、送料等諸々のコストを考えると利益が少なくなってしまいます。ある程度ポーションを大きくして、商品1点に対する利益を確保しておくことも重要です。

加えて、ECサイト内で商品をどのように紹介するかも大切です。お客様が実際に目にしたり、手に取ったりできない以上、お客様が購入の判断を下す材料となるのはサイト内の情報がすべてです。今その料理が目の前にあるようなきれいな写真や香りが漂ってきて食べたくなるような文章しか、お客様にその料理の良さを伝える手段はありません。サイト内では写真と文章が料理そのものです。手を抜かず、しっかりとお客様に伝えてください。

ECサイトの作成方法


では、商品・営業許可のどちらも問題ないとなれば、いよいよECサイトの立ち上げとなります。

ここで決めなければならないことが、2つの軸で存在します。一つは、誰がやるのか。もう一つは、何をやるのかです。

誰がやるのかとは、設定などを自社でやるのか外注するのかということです。
何をやるのかとは、自社のECサイトを立ち上げるのか、もしくは外部のサービスを利用するのかということです。
最終的には、この2軸のかけ合わせでできた選択肢の中から一つを選ぶこととなります。

誰がサイト作成するか

自社でやるか外注するかで、それぞれメリット・デメリットがあります。どちらがよいのかは、どこまでを求めるのかで決まってきます。両者のメリット・デメリットを比較して、自店に相応しいほうを選択しましょう。

自社作成のメリット・デメリット

ネットショップを始めるときに普通に考えるのが、自分たちでサイトを立ち上げることです。もちろん、メリットもデメリットもあるのですが、自社にとってベストなのかどうか両面から見て判断しましょう。

自社作成のメリット

最大のメリットは外注費用がかからないことでしょう。また、ノウハウが蓄積され自社の資産となることも今後を考えると利点となります。他にも、外注先のリアクションを待つ必要がないのも良い点ではないでしょうか。

自社作成のデメリット

知識がない中、手探りでECサイトを立ち上げるとなると、負担が大きくデメリットとなるでしょう。ECを始めるにあたって、サイトの立ち上げ以外にもやるべきことが多い中ではなおさら大きく感じられます。退職した時のことを考えると、誰を担当者にするのかも難しい所です。

外注作成のメリット・デメリット

自分たちの本来の仕事に集中したいのであれば、出てくるのが外注できないかということです。とはいえ、不安な点もいろいろあるでしょう。結論を出す前にメリット・デメリットを見ておきましょう。

外注作成のメリット

ある程度のことは任せておけるのがメリットです。もちろん、すべてを任せきることはできませんが、新たにECを始めるときにサイトの立ち上げをしなくて済むのはかなり負担を軽くしてくれます。当然、専門知識も持っていますので、問題を素早く解決できる点でも有利です。

外注作成のデメリット

当たり前の事ですが、相応の費用が必要となります。まだ、どの程度の売上があるかもわからないうちの出費は避けたいのが普通です。小さく始めてから大きくしていくことを考えているならば特に、外注するかどうかは慎重に判断しなければなりません。

どのサイトを利用するか


ECサイトを大きく2つに分けた場合、「ECモール」「自社ECサイト」となります。

モールとは、「Amazon」や「楽天市場」などを差します。多くの出店があるのですが、お客様の意識としては、個別の店で買うというよりも「Amazonで買う」「楽天市場で手に入れる」というほうが強いでしょう。
自社サイトは、簡単にいってしまうとモール以外のものといってよいでしょう。内容は様々であり、サービスを提供している企業も無数にあります。これらを自社の名前で運用するものをまとめて自社サイトといっています。

このモールと自社サイトにもそれぞれメリットとデメリットがあります。それらを簡単に見ていきましょう。

ECモールのメリット・デメリット

おそらく最も参入しやすいのが、これら大手が運営しているECモールでしょう。事実、出店者の数も膨大です。ただし、安易に決めず、しっかり比較をしておきましょう。

ECモールのメリット

一番のメリットといえるのは、集客力でしょう。お客様が欲しいものがあるとき、まずはAmazonや楽天のサイト内で商品を探すことが多いので、後はサイト内でのアピール力の勝負となります。その中に入れることは、モール外にいるよりも販売機会が増えるということです。また、モールへの信頼度が高いので、お客様に欲しいと思われた後に自店の信用を調べられることはほとんどなく、購入に結びつきやすくなります

ECモールのデメリット

デメリットは、手数料などのコストが高いことです。販売価格から一定の割合でモールに支払わなければならず、商品が売れても残る利益は少なくなります。また、モール側の販売施策に左右されるため、自社の自由にできる範囲が限られてしまいます。先ほど、モール内で比較されれば競争相手が限られると書きました。しかし、モール内であっても商品によっては相当な数の競合とお客様を奪い合わなければなりません。手数料を考えると販売数量は少なくなっても、自社サイトで運用したほうがよいということもあり得ます。

自社サイトのメリット・デメリット

自社サイトといっても、自分たちで比較的簡単に立ち上げることができるものから、莫大な金額をかけて専門業者に依頼して作ってもらうものまで様々です。今回は、一般的な飲食店でも始められるサイトを前提にお伝えします。

自社サイトのメリット

まずはメリットからです。すでにお伝えしましたが、モールに出店した場合の手数料はかなりの割合となっています。自社サイトも何を使うかで変わってはきますが、いずれの場合でもモールの手数料に比べれば低く抑えられます。つまり、同じ商品を売っても残る利益が多いということです。
また、運営に関しての自由度が高いのも魅力です。モールの販売施策に影響されず、自社のペースで商売を続けたいと思うのであれば自社サイトを立ち上げるのがおすすめです。

また、このコロナ禍で地域・期間によっては補助金・助成金を受給できる場合があります。
ECサイトを立ち上げる際には、自治体等の支援事業を調べてみましょう。

自社サイトのデメリット

集客力の点は、自社サイトのデメリットとなるでしょう。SEO(検索エンジン最適化)対策をしていない自社サイトを検索経由で見つけてもらうのは至難の業です。SEO対策で効果を上げられなければ、ほとんど集客は見込めません。
では、自社サイトは避けるべきかといいますと、そうとも限りません。通常の検索以外からの流入経路を持っていればやる価値は十分にあります。店舗に来店されるお客様にお知らせをしたり、店の前の看板で宣伝したりと、オフラインで知ってもらう方法やSNSで地道に宣伝する方法など、やりようによってはサイトを訪問してくれる人を増やすことはできます

ECサイトの運用方法


自社のECサイトとECモールとではいろいろと違いがあります。また、自社運用か外注かでもやることは変わってきます。ここでは、自社サイトを自分たちで運用することを前提に話を進めていきます。

出荷について

まず確保しなければならないのが配送業者です。出荷の都度、配送業者をどこにするか考えるようでは時間がかかってしまいますので、事前に各社を検討したうえで、送料だけでなく集荷などの条件も考慮して決めておきましょう

また、忘れがちなのが商品以外のフォローです。調理の仕方やおいしく食べるためのアイデアなどを印刷した紙を商品と一緒に送ると親切なお店だと思ってもらえ、次の商品購入にも結び付きます。一度買っていただいたお客様は、二度目の購入へのハードルが下がっています。いかにリピーターを増やしていくかもEC販売においては大事な視点です。

集客について

顧客情報をどのように活かすかも常に考えていなければなりません。可能であれば、アンケートなどでより多くの情報を集め、販売機会を逃がさないようにする必要があります。例えば、誕生日がわかっているのであれば、誕生日前に「誕生日用の商品をご用意しました。誕生日プレゼントとして特別に、○○%引きでお買い求めいただけます」という案内を出すなど、こちらから販売をしかけられるようなアイデアを持っておくとよいでしょう。

SNSなどを使って発信して、新しいお客様を取り込むことも積極的に行っていきましょう。はじめのうちは、なかなか成果が出にくいものですが、地道に続けていくうちにお客様になってくれる人が出てきます。すると、今度はこの方の投稿を見てお客様になってくれるということが起きてきます。これらが連鎖すると少しずつですが、SNS経由からのお客様が増えていきます。

加えて、実店舗の営業でもお客様のメールアドレスを伺うなどのつながりを作っていく努力が必要です。メールやLINEなどで、こちらから連絡をすることができれば新商品発売やキャンペーンのときなど高い確率で知っていただくことができます。特に、実店舗に来たことがあるお客様はECでの購買につながりやすいので、必ず連絡先をもらっておきましょう。

ECを始めるにあたっては、普段の飲食店営業とは別の準備・心構えが必要です。商品自体もそうですが、ECサイトはどのように立ち上げるのか、始めたら何に気をつけて運用するといいのかといった、今までの経験では導き出せない問題が多くあります。
少しでもご興味のある方はぜひお問い合わせください。

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