飲食店がマニュアルを作成し従業員間で共有することは、オペレーションの効率化をはかるために必要不可欠です。リピーター獲得や従業員の心理的・肉体的負担を減らすことにも効果があります。
お店の売り上げ増加につながり、従業員の労働環境が改善され人材確保も容易になるでしょう。
今回は、飲食店がマニュアルを作成するメリットやマニュアルの基本的な作り方などについて解説します。
飲食店がマニュアルを備えるメリットとは?
マニュアルがなくても口頭の説明で十分だとお考えかもしれませんが、マニュアルとは業務をスムーズに行うためのルールや手順をまとめた「取り扱い説明書」のようなもので、あると非常に便利なものです。
まず、マニュアルがあることのメリットを列挙してみます
メリット
その都度考えて、判断する労力を省ける
サービス内容や接客などの質を一定に保てる
クレームやトラブルの発生時に素早く対応できる
新人教育を省力化できる
新人の「何度も質問しづらい」という心理的負担を減らせる
各人のタイミングで復習や確認ができる
人は目の前で起きていることに対して、毎回のように考えて、判断しながら行動すると大きな負荷を感じるものです。
また、複数の従業員が接客する場合、人によってやり方が違えばお客様の不信感を買い、お店の評判を落としかねません。トラブル発生時に対応が遅れたために、被害を大きくしてしまうことは往々にしてあることです。マニュアルがあるとこれらを減らせます。
他にも新人教育をする際、すべてを口頭で説明する必要がなくなるため、時間や手間を減らせコストを削減できるでしょう。
教わる側にしても、何度も同じ質問はしづらいので、わからないことをそのままにしてしまいがちです。
その結果トラブルへとつながることが考えられますが、マニュアルがあればわからないことを自分で解決できますので、トラブルが発生する頻度も少なくなるでしょう。
マニュアルがないときには、これらのメリットに気づきにくいものです。今一度、上記のような内容が店舗で起こっていないか振り返ってみましょう。
飲食店が作るべきマニュアルの種類とは?
飲食店に必要なマニュアルは、大きく分けて3つあります。
オペレーションマニュアル
接客マニュアル
緊急時対応マニュアル
オペレーションマニュアル
業務の手順や衛生管理などの業務全般に関わるマニュアルで、業務のクオリティを一定に保ち、店舗のルールを共有しながら効率よく営業が行えるようにするために必要です。
以下に代表的なものを挙げますが、お店独自のルールなど、必要と思われるものはすべて盛り込みましょう。
開店・閉店準備の手順・内容
清掃の場所や手順
身だしなみや手洗いの手順など衛生管理
仕込みや食材の管理
備品管理
接客マニュアル
お客様をお出迎えする時から、サーブ、会計、お見送りまでの間に必要な、声かけや動作の手順などを盛り込んだマニュアルです。
接客の良し悪しでお客様のリピート率は変わるので、接客は飲食店にとって重要な課題です。個人の裁量に任せず、マニュアルによって一定の質を保ちましょう。
接客マニュアルに盛り込む内容は以下のようなものです。
言葉遣い・挨拶
姿勢や表情・身だしなみ
オーダーのとり方や配膳のルール
会計時の態度や手順
お出迎え・お見送りの仕方
姿勢や表情・言葉遣いなどもルール化することで、接客の水準を一定に保つことができ、新人の教育もスムーズに行えるようになります。
緊急時対応マニュアル
大きなミスやクレームなどの不測の事態が起きたときに、従業員がすぐに確認でき、慌てず対応できるように作っておきます。普段から従業員間で共有しておき、いざというときに取り乱して他のミスを誘発しないように備えておくことが大切です。
緊急時マニュアルに入れるべきものとして下記が挙げられますが、これらを含め考えうるすべてのことを盛り込んでおきましょう。
店長が不在時の対応方法
災害発生時のお客様対応や避難誘導の仕方
予約のミスなどクレーム発生源への対処法
発注ミスなど食材の過不足への対応
従業員に欠員が出たときの対応
クレーム対応
特に悪質なクレーマーに関しては、対処を間違うと大きな問題に発展する可能性があります。正しいクレーム対応については下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
飲食店が直面するクレーム対応!その内容とおすすめの対応策
作成時に注意するポイント
やってしまいがちな失敗をまとめましたので、マニュアル作りの際の参考にしてください。
必要な情報がどこに書いてあるのか見つけにくい
ざっくりしすぎていて伝わらない
情報が足りない(体系的にまとめられていない)
皆の意見が反映されず、一部の人の独断と偏見で作られている
全員が手に取りやすい場所に置かれていない
わざわざ作っても、見てもらえない理解されないでは意味がありませんので、従業員全員にとって、見やすくわかりやすいものを目指しましょう。
マニュアル作成の基本的な流れ
マニュアルを作る手順は下記のとおりです。
①業務をすべて書き出す
②各業務のゴールを決める
③ルールを明確にする
④マニュアルにまとめる
⑤定期的に見直す
①業務をすべて書き出す
まずは従業員全員で、普段どのように業務を行っているか書き出してください。
人によって手順が違っていたということも明らかになってきますが、ここでは良し悪しの判断をせずに、いったんすべてを文字に起こしましょう。
②各業務のゴールを決める
それぞれの業務に対して、合格ラインを設定しましょう。
「ここまでできたらOK」という最低目標があることで、誰がやっても一定のクオリティを保つことができるうえ、不必要に手間や時間をかけることがなくなり、効率化につながります。
③ルールを明確にする
次に「②各業務のゴールを決める」で決めた合格ラインを越えられるように各作業をルール化してください。
暗黙の了解としてやっていたようなこともルールとして定め、①で分かれてしまった作業手順なども最適なものに絞って共通化します。逆に、今までやっていても必要がないと判断したものは思い切ってやめるなど、業務が効率よく行えることを目指しましょう。
④マニュアルにまとめる
ひとつひとつの業務を細分化したうえで、項目分けし、一目でわかるようにまとめます。
新人でもすぐに知りたいことにたどり着けるように、目次と索引をつけ、可能であれば写真やイラストも使ってわかりやすくしましょう。
⑤定期的に見直す
マニュアルは一度作って完成ではありません。
営業中などにより効率よくできるアイデアが浮かぶこともありますし、環境が変われば対応を変えていかなければならないことも出てきますので、その都度マニュアルを改善する必要があります。マニュアルを作っても、改善しなければ使い物にならなくなってしまいますので、こまめに見直しをしていきましょう。
飲食店におけるマニュアル作成は、オペレーションの効率化、接客のクオリティ維持、緊急時のスムーズな対応につながる重要なものであることを説明してまいりました。
初めて作る際には大変な作業だと感じるかもしれませんが、一度作ってしまえば手順の確認や新人教育などをするときに大きなメリットを得られますので、この機会にマニュアルを作成し、さらなるお店の発展へとつなげましょう。