コロナウイルスが与える飲食業界への影響とは?
世界各国で感染が広がっているコロナウイルス。日本でも徐々に感染者数が増えています。
その影響により現在、多くの飲食店で売上が減少しています。飲食店リサーチによると、飲食店.COMに登録している飲食店経営者・運営者におこなった2月実績の調査で、約6割の飲食店が前年同月比で売上が下がった、という結果になったそうです。
国や各自治体が不要不急の外出を控えるよう呼びかけている今、飲食店には売上減少のほか、以下のような変化や不安もあらわれています。
急な予約キャンセル
イベント関連の自粛(歓送迎会・打ち上げなど)
外国人客の減少
人材離れ
収束の見通しがつかない
先行きの不安
これらの影響により休業・閉店に追い込まれてしまう飲食店も見られ始めました。コロナウイルスという外部要因は、飲食店経営に大きな影を落とす原因になっているといえます。
飲食店ができることとは?
このような厳しい状況のなか飲食店は何ができるのでしょうか。ここでは営業をおこなう飲食店に向けて、ぜひ取り組んでおきたい対策をご紹介します。
衛生面での配慮
衛生面の対策は絶対条件です。通常の衛生管理はもちろん、スタッフの手洗い、消毒、うがい、マスク着用は必須としましょう。また、出入口にはアルコール消毒液や、さらに強力な「次亜塩素酸ナトリウム液」を来店してくれたお客様に「噴霧」してもらいましょう。消毒液が置いてあるだけでは見逃してしまうお客様が出てくる可能性もあるので、スタッフの声かけやわかりやすい明示が必要です。
同時に、コロナウイルスは「石鹸」に弱いということなので、お客様に手洗いを促すことも必要でしょう。
時短営業
現在、外出自粛によって夜遅い時間の来客は見込めないのが実情です。営業時間をはじめから時短しておくことも必要ですが、お客様がゼロになった時点で早めに閉店するなどの対応もしましょう。
お客様がいない中での就業は、スタッフのモチベーション低下を起こす原因になります。
テイクアウト、配達サービスの導入
政府からの外出自粛要請などもあり、人が密集する空間へ立ち入る人が激減しています。もちろん、通常通り営業してもお客様は来ません。
そんなときに取り入れたいのが「デリバリー・配達サービス」や「テイクアウト」です。導入すれば、いわゆる「巣ごもり消費」の獲得を見込むことができます。
しかしながら、デメリットもあります。デリバリーに関しては、デリバリーポータルサイト・アプリを利用する以外に宣伝できるものが今のところありません。無いわけではないのですが、知名度からいくと2つぐらいしか効果は見込めません。成果報酬型ですが手数料が非常に高額なため、通常よりも価格を上げる必要があり、また消費者からすると配達料などもかかるため「このお店高いな・・・」と感じてしまいます。付け焼き刃では、店舗のイメージダウンなどにつながる可能性があることも頭に入れておきましょう。
また、デリバリー・テイクアウト、どちらも共通して考えなければならないのは、ランチタイムの対応です。もしもランチタイムに通常の店内のお客様とデリバリー・テイクアウトの注文が殺到した場合、確実にオペレーションがパンクします。店舗スタッフと綿密に打ち合わせをした上で導入を検討しましょう。
食材費、人件費の調整
通常より食材費を抑えることも必要になるでしょう。お客様が少なくなれば、そのぶん食材の消費量が減るためです。
またやむなくスタッフの出勤時間を削り、人件費を調整することも必要になるでしょう。前述した時短営業を上手く利用し、時には店舗間のスタッフ共有なども含めながら、少ない人数で営業できる状態を作り、調整しましょう。
コスト削減がキャッシュフローを保つための基本です。時にはドラスティックな経営判断を迫られることもあります。
SNS・Googleマイビジネスでの情報発信
SNSでの情報発信も取り入れたい対策といえます。営業していることはもちろん、テイクアウトや配達サービスを導入していることなどを告知することで、販売促進を期待できるためです。このようなO2O(オンライン・ツー・オフライン)の活用も前向きに検討してください。
特にGoogleマイビジネスには、コロナウイルス(COVID-19)についての投稿機能が設置されています。また現在、口コミの投稿機能を停止しており、コロナウイルスに関する誹謗中傷などのいたずらな書き込みをさせないようにしています。マップ機能を提供する企業として、世界的情勢を見ながら小売店への配慮も考えているところは、さすがGoogleというところでしょう。
Googleマイジネスを含め、各SNSの機能に関しては、今後さまざまな機能制限や拡張が考えられますので、随時確認をすることも必要でしょう。
近隣飲食店との連携
普段は競合である近隣の飲食店ですが、飲食業全体の消費が落ち込んでいる今だからこそ情報共有などをおこない、うまく連携していくことが大切です。成果が出ている施策の情報や激励のメッセージを発信し、業界全体を盛り上げていきましょう。
なお、一般社団法人日本フードサービス協会では飲食店が取り組むべきコロナウイルス対策の概要をまとめています。対策チェックリストもあるため、ぜひ参考にしましょう。
http://www.jfnet.or.jp/contents/_files/safety/jf_corona_taisaku_kakudaiki.pdf
感染拡大期における外食産業のための新型コロナウイルス感染症対策(暫定版)
資金繰りが厳しい飲食店への支援策
いくら衛生管理やコスト削減などに取り組んでも、事業を安定させられない飲食店も出てくるはずです。そうしたときは国の支援策に頼ることを検討しましょう。
国は「セーフティネット保証制度」の対象緩和を通じて、コロナウイルスの影響によって資金繰りが厳しくなった中小企業をサポートしてくれます。
セーフティネット保証制度とは、突発的な障害によって経営に支障をきたした中小企業や小規模事業者に対して資金繰りの支援をおこなう制度のことを指します。
現在のところ経済産業省が「セーフティネット保証4号」、中小企業庁が「セーフティネット保証制度5号」の適用・追加を実施しています。自社がその対象に含まれるか確認したうえで支援してもらえるかどうか相談してみましょう。
また各都道府県、自治体も支援策を打ち出しています。例として一都三県の支援策を以下に示します。
東京都
東京都はコロナウイルスによって事業に影響を受けた中小企業、または組合を支援するための「緊急融資制度」を創設しました。
融資条件には
コロナウイルスが事業活動に影響を与えていること
最近3ヶ月、または今後3ヶ月の売上見込みが2019年12月以前の直近同期比で5%以上落ち込んでいること
が挙げられています。
支援を求める飲食店経営者は東京都のHPをチェックし、該当しているかどうか確認することをおすすめします。なお、各自治体でも支援の動きが広がっていますので、必要に応じてそちらのHPも見ておきましょう。
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/taisaku/saigai/1007261/1007457.html
東京都の支援制度について
http://www.city.sumida.lg.jp/sangyo_matidukuri/sangyo/yuusi/ta60100020.html
東京都墨田区の支援制度について
https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/kuse/koho/pressrelease/r2/r203/20200302.html
東京都千代田区の支援制度について
神奈川県
神奈川県は最近1ヶ月の売上高が前年同期比で減少している事業者に金融支援をおこなうことを発表しています。融資対象者は減少幅の枠組みによって変わりますので、HPをきちんとチェックしましょう。
また横浜市、鎌倉市でも支援策が創設されています。該当地域の事業者はこちらもあわせて確認しておきましょう。
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/m6c/cnt/f5782/corona.html
神奈川県の支援制度について
https://www.city.yokohama.lg.jp/business/kigyoshien/yushiseido/jyouken/keizeihendou-korona.html
神奈川県横浜市の支援制度について
https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/shoukou/sien/kinkyu.html
神奈川県鎌倉市の支援制度について
埼玉県
埼玉県は「経営安定資金」「経営あんしん資金」の融資限度額の拡大と利率の引き下げ、融資期間の拡大などを実施しています。
また新しく「緊急借換資金」を創設し、県内にある事業者の資金繰り支援に取り組んでいます。自社の飲食店が対象に含まれるかどうかチェックしてみてください。
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0805/seidoyushi/07j-corona.html
埼玉県の支援制度について
千葉県
千葉県は国が支援対象業種として指定している事業者に対して「セーフティネット資金(市町村認定枠5号)」の提供を実施しています。
認定基準では最近3ヶ月の売上高が前年同期比で5%以上減少していることなどが挙げられています。詳細は下記よりご覧ください。
https://www.pref.chiba.lg.jp/keishi/ncov/colona2.html
千葉県の支援制度について
もちろん、ほかの都道府県や自治体でも支援制度が設けられています。該当地域の飲食店はぜひ確認しておくことをおすすめします。
コロナウイルスが飲食店に与える影響は、リーマンショックや東日本大震災より大きくなる可能性があるといわれています。厳しい状況ですが、飲食店ができることは徹底した消毒体制の構築や新たな販売促進策の導入などです。店舗があればお客様はまた戻ってきます。国の支援策も活用しながらうまく事業を継続させていきましょう。
【参考】
https://www.inshokuten.com/foodist/article/5700/
新型コロナウイルスと戦う外食業界。6割の飲食店が売上減も「明けない夜はない」の声
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200327/k10012353221000.html
週末の外出自粛要請で小売店は?飲食店は?【各社対応一覧】
http://www.jfnet.or.jp/contents/_files/safety/jf_corona_taisaku_kakudaiki.pdf
感染拡大期における外食産業のための新型コロナウイルス感染症対策(暫定版)
https://www.foods-ch.com/gaishoku/1583832465113/
新型コロナウイルスが飲食店を直撃。補助金・助成金活用でピンチを乗り切る