コロナ禍以降、テイクアウトを始める飲食店が増えています。店内飲食での売上が限られている以上テイクアウトはお店にとって重要な施策です。
しかし、どれだけの飲食店が食中毒のリスクについて認識し対策しているのか心配です。なぜなら、テイクアウトには特有の危険が潜んでいるからです。
特に夏場は菌の繁殖が進みやすくリスクが大きくなるので、さらなる注意が必要。
新しく始めたテイクアウトで食中毒を出したのでは、元も子もありません。そうならないためにも、食中毒への対策について確認しておきましょう。
1.テイクアウトでの食中毒発生事例とリスクが高くなる理由
テイクアウトでは、店内で料理を提供する場合に比べ食中毒が起きるリスクが高くなります。テイクアウトで起きた食中毒の事例と食中毒リスクが高くなる理由を見てみましょう。
【発生事例】ウエルシュ菌による食中毒
テイクアウトした弁当を食べた70名のお客さんが下痢、腹痛などの症状を訴えた例です。原因菌としてウエルシュ菌が検出されましたが、その一つが鶏肉の煮物でした。飲食店はこれを2日前に調理し、一旦保冷したものを当日は6時間以上常温で放置した後、再加熱せず弁当に入れたとのこと。
食中毒に対する知識があれば、起きなかったかもしれない事例です。まずはしっかりした知識を持つことが重要であると示唆しています。
【参考】テイクアウトや宅配された弁当等により発生した食中毒事例 – 東京都福祉保健局
【原因1】調理から食べるまでの時間が長い
料理に付着した食中毒菌は時間とともに増加しますので、調理後から食べるまでの時間が長くなるほど発生リスクは増大します。テイクアウトでは、持ち帰りなどで必然的に食べるまでの時間が空いてしまいますから、当然食中毒は起きやすくなるということです。
作り終わってすぐに料理が提供される店内飲食、その感覚のままでは見落とされるものの一つが、時間経過によるリスクの計算です。
【原因2】温度管理が難しい
食中毒菌を増やさないためには、10℃以下あるいは65℃以上に保つ必要があります。しかし、テイクアウトでお客さんに引き渡した後は、飲食店では温度管理ができません。ここで菌が繁殖しやすい環境となります。
飲食店としてはお渡しをした時点でサービスが終了したと思ってしまいますが、その後の温度管理にも落とし穴が待っています。
【参考】テイクアウトや宅配を始める飲食店の皆さんへ – 東京都福祉保健局
【原因3】店内提供の常識が通じない
飲食店では一般的に作り置きが行なわれます。この場合、たとえ仕込み中に十分に加熱したものでも、保存中に食中毒菌が増えることがあります。店内飲食であれば提供する前に再加熱するものでも、テイクアウトではそのまま盛り込むことがあるようです。こうなると菌は増える一方となり、食中毒へとつながりやすくなります。
また、温かい料理と冷たい料理を同じ容器に入れたことが原因で起きる食中毒もあります。
これは温かい料理の熱で冷たい料理の温度が上がり、食中毒菌が増えるためです。これも普段の営業で温かい料理と冷たい料理を一つの皿に盛ることに抵抗がないために起きてしまう一例でしょう。
2.テイクアウト時の食中毒予防に必要な衛生管理
食中毒予防の3原則は「つけない」「ふやさない」「やっつける」です。
この3原則に沿って、食中毒予防に必要な知識を整理していきましょう。
「つけない」
まずは手洗いの徹底です。多くの食中毒菌は人の手を介して広められます。ですから、こまめな手洗いによって菌を落とすことが重要です。
その上で手袋も着用しましょう。丁寧に手洗いをしても、傷口やささくれに黄色ブドウ球菌が存在しますので、手袋は必ず着用してください。
加えて調理器具の洗浄消毒も徹底しましょう。不衛生な調理器具も食中毒の発生原因の一つです。
忘れがちなのが、まな板の使い分け。肉・魚・野菜で別のまな板を用意し、肉も種類によって分ける必要があります。
「ふやさない」
大量仕込みや前日調理には注意が必要です。すでに述べましたが、テイクアウトでは調理後から食べるまでの時間が空いてしまいます。提供前に菌を増やさないことが何よりも重要です。
加熱調理したものを一旦保存する場合は、容器を小分けにして粗熱をとってから冷蔵庫に入れましょう。大きな容器では内部が冷えるまでに時間がかかりますし、温かいものを冷蔵庫に入れると庫内温度が上がってしまうからです。
先述の「温かいものと冷たいものを同じ容器に入れる」ことも避けてください。
料理をお渡しする際、温かい料理以外には保冷剤を付けるのもいいでしょう。
「やっつける」
おいしさにとってはプラスな「あふれ出る肉汁」なども、食中毒予防の観点からは注意が必要です。加熱が不十分な料理は食中毒の危険性が高いからです。もちろん「生もの」や「半生もの」もテイクアウトには向かない料理です。加熱が不十分なものがないかメニューを見直してみましょう。
また加熱調理したものであっても、冷めたものは再加熱することを心がけてください。
3.テイクアウトするお客さんに食中毒予防の協力を得るための工夫
ここまで、飲食店ができる予防策をお伝えしましたが、それだけでは十分でなく、お客さんの協力も必要です。
口頭で注意事項をお伝えする
お引き渡しの際に「早めに召し上がっていただきたいこと」「可能なものは再加熱してから召し上がっていただくこと」を忘れずにお願いしましょう。
文字でも情報を確認できるようにする
口頭だけでなく「消費期限」や「保存温度」など食中毒予防のための情報を書いたシールを張り、しっかりと文字で伝えることも重要です。
保冷バッグや保冷剤を持参していただく
予約をいただく場合には保冷バッグや保冷剤を持参していただくようお伝えすることも、利用者の協力を得るための工夫の一つでしょう。
飲食店にとって、テイクアウトは新たな収入源として定着しつつあり、テイクアウトを機に新規のお客さんを取り込んでいる例も見られます。
しかし、このチャンスが大きなリスクも抱えていることを認識しておかなければ、足をすくわれることにもなりかねません。
食中毒を出さないための知識を持ち、十分な対策をしてテイクアウトを続けていきましょう。
【参考】
テイクアウトや宅配された弁当等により発生した食中毒事例 – 東京都福祉保健局
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/kyoka/takeout_fp.html
テイクアウトや宅配を始める飲食店の皆さんへ – 東京都福祉保健局
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/kyoka/takeout.html
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