飲食店No Show(飲食店における無断キャンセル)問題とは
予約を入れたにも関わらずその日になっても来店せず、店舗からの連絡にも応答しない。これが、飲食店オーナーを悩ませるNo Show 問題です。
SNSの普及により気軽に予約ができるようになった背景から、キャンセル数もまた増加傾向にあります。飲食店の予約キャンセルは年間約10%で、そのうちの1割を「No Show(無断キャンセル)」が占めている現状。無断の予約キャンセルよる被害総額は、年間約2000億円にも上ると言われています。
中には極めて悪質なキャンセル内容もあり、1組でも発生すればその店舗は様々な面で被害を被ることになります。店舗側はそれに対し、どのように対処すべきなのでしょうか。
まずはNo Show 問題の実態からご紹介します。
摘発者も出たNo Show 問題
キャンセルによって何らかの損失が発生した場合、飲食店側は損害賠償を請求することが可能であると言われています。また、無断キャンセルは「偽計業務妨害罪」にあたる可能性も。その場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられることがあります。
No Show 問題が各メディアで取り上げられることが増えたため、このようにれっきとした犯罪であるという認識が徐々に浸透しています。実際に無断キャンセルにより逮捕された事例もあるのでご紹介します。
実際の事例
50代の男性が偽名を使って居酒屋に電話をし、「1万円のコースで3千円の飲み放題をつけてほしい」と17人分の予約をしました。しかし、当日男性からの来店・連絡はありませんでした。
この男性は同系列4店舗にも同じ偽名で3~20人分の予約を行い、いずれも無断キャンセルをしていたということです。この問題は刑事事件として扱われ、男性は偽計業務妨害容疑で逮捕されました。
店側が被る被害とは?
No Show が起きた場合、店舗は大きな被害を被ります。その内容は費用に関するものだけではなく、店舗運営において様々な面での損失となります。
では、無断キャンセルが生じたとき、具体的にどのような被害が発生するのでしょうか。
原材料費の損失
客数が多い予約やコース料理の予約は、その内容に合わせて材料を発注します。予約時間までに、あらかじめ料理の下ごしらえまでを終わらせている店舗も多いでしょう。
そこでキャンセルとなると、用意していた材料は無駄になり原材料費の損失が発生します。転用可能な飲料等であれば使い回しができますが、用意する食材の多くは損害の範囲に入ると考えられます。
食材廃棄費用
食材は『事業系一般廃棄物』。原則として自治体が家庭のごみとして処理しています。つまり、食材の廃棄には私たちの税金が使われているのです。
ごみの処理費用は年々増加しており、その額はおよそ2兆円。食品廃棄費用は年間8000万円~1兆円で、全体のごみ処理費用の半分を占めています。
無断の予約キャンセルによる食材の廃棄が増えるほど、その店舗含め全ての納税者に負担がかかるのです。
人件費、光熱費の損失
人件費と一口に言ってもその内容は様々。仕込みスタッフ、ホールスタッフ、調理スタッフ、予約が入ると数名の人員を確保しておく必要があります。
転用可能な従業員の人件費を除いても、予約分の料理を仕込むスタッフや予約人数に合わせて確保したスタッフの人件費は大きな損害となります。また、予約の管理やキャンセル対応の時間も損失の範囲にあります。
その他、料理の仕込みにかかった光熱費も無駄になるなど、多方面での損害が発生します。
逸失利益
予約席の確保により、他のお客様の入店をお断りする状況もあります。それにも関わらず予約客の来店がないと、その席分の売上は一切発生しません。予約がなければ本来得られるはずだった売上分の損失となります。
このように予約キャンセルに直接関わる被害だけでなく、間接的に利益損失となる被害も発生するのです。
No Show(飲食店における無断キャンセル)対策
メディアで多く取り上げられるようになったとは言え、犯罪という認識はまだまだ薄いNo Show 問題。社会全体で『No Showは重大な問題』という意識を持つことが、無断キャンセルを減らす大きな策となるでしょう。
それに併せ、店舗側が具体的にできる防止策を講じることで、被害を抑止していくことは可能だと言えます。No Show 防止に向けて飲食店事業者が取り組める対策をご紹介します。
キャンセル連絡をしやすいシステム作り
キャンセル連絡の電話がなかなか繋がらないという状況も、客入りのピーク時にはあり得ます。その結果としてNo Showとなるケースも少なくありません。
そのような事態を防ぐためには、キャンセルを受ける設備を整えておくべきでしょう。予約確認時のメールにキャンセルボタンを添付しておくなど、電話以外のキャンセル方法を新設するのも効果的です。
事前決済や預かり金の導入
事前決済や預かり金の導入を行えば、無断キャンセルとなった際にキャンセル料を必ず徴収できるので安心です。
また、予約時にクレジットカードの事前登録を求めるという策もあります。こちらもキャンセル費用をあらかじめ確保しておけるので、利益損失のリスクは確実に下がります。
キャンセルポリシーの設定
予約前の説明事項内、予約確定後の電話やメールにて、キャンセルポリシーを明確に提示することはNo Showの防止に直結します。
その内容にキャンセル料金についての説明を含めれば、安易に予約やキャンセルをする人は減るでしょう。
弁護士による代行回収サービスの利用
無断キャンセルで発生したキャンセル料金を弁護士が代わりに回収するというサービスがあります。キャンセル料金の30%(および消費税)を成功報酬として支払うことで、利用することができます。
店舗だけでは手が回らない、有効な解決策が見つからないといった場合に効果的な選択です。
予約保証サービスの利用
キャンセルが発生した際に、キャンセル内容に応じた保証をするグルメサイトのサービスがあります。
月額や年額の設定された料金を企業に支払うと、被害額の全額(一部の場合も有り)やお見舞い金が支払われるサービスです。
無断キャンセルによる大きな被害を避けるためには、キャンセル発生後に起きる利益損失に対する対策を講じることも重要となります。
年々深刻化するNo Show 問題は飲食店に大きな被害を与えています。店舗経営を維持するためにも、無断キャンセル対策をより重要視していく必要があるでしょう。
予約時に確実に連絡先を把握することや、予約確認の連絡を徹底するなど、直ぐにできる対策も多くあります。まずは飲食店側が予約に対して重く捉えることで、軽はずみな無断キャンセルは減っていくのではないでしょうか。
【参考】
https://www.foods-ch.com/gaishoku/1543398183428/?p=1
飲食店のキャンセル料請求に対する指針が発表。ノーショー対策として期待も
https://airregi.jp/magazine/guide/6943/
飲食店の深刻な問題である予約の無断キャンセルへの防衛策
https://www.meti.go.jp/press/2018/11/20181101002/20181101002-1.pdf
No Show(飲食店無断キャンセル)における対策レポート
https://www.sankei.com/affairs/news/191111/afr1911110014-n1.html
居酒屋無断キャンセル、業務妨害容疑で59歳男を逮捕 警視庁
https://blog.losszero.jp/blogpost/news_0281/
意外と知らない!?食品ロスはお金ロス
https://www.fnn.jp/articles/-/15711
飲食店「無断キャンセル」で弁護士が料金回収する新サービス登場…撲滅につながる?詳細を聞いた
https://noshow.jp/plan_32/
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