飲食店の経営はコロナ禍で大きな打撃を受けました。そこで打開策の一つとして注目されているのがフランチャイズ展開。自己資金で新たに出店がすることが難しい中、他者の資金で多店舗展開しブランド化を進められるのが魅力です。
とはいえ、フランチャイズ本部としての知識や経験がない状態で展開したのでは、成果に繋がりにくいでしょう。今回は、そもそもフランチャイズとはどういうものか、どのようなメリット・デメリットがあるのか、自社が乗り出すための条件など、フランチャイズの基礎的なことを解説します。
フランチャイズ化に進むべきかどうかがわかりますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
フランチャイズとは
フランチャイズとは、本部が個人や法人と契約して店名やブランド名の使用を許可したり、商品やサービスの販売権を付与したり、情報やノウハウの提供をしたりといったことをする仕組みです。契約した加盟店は加盟金や保証金、毎月のロイヤリティ(権利やノウハウの使用料)を支払うこととなります。
商品開発やオペレーション構築など開店初期に必要なものが提供されるため、飲食店経験が浅い人や企業、または他業態への進出を考えている飲食店にとって適しているシステムです。
飲食店がフランチャイズ展開するメリット・デメリット
飲食店がフランチャイズ本部となって加盟店を募集し展開していく際には、本部となるメリット・デメリットを把握しておく必要があるでしょう。以下に、代表的なものを挙げていきます。
メリット
速やかに多店舗展開ができる
初期投資が比較的必要となる飲食店では、自社の経営資源だけを利用して店舗数を増やすには時間がかかります。しかし、他者の資金や人材などを利用して自社の看板で出店ができるフランチャイズでは、速やかな多店舗展開が可能となります。店舗数が増えるほどブランド力も上がり、加盟希望の増加が期待できるため、スピード感を持って成長をしたい飲食店には格好のシステムといえるでしょう。
直営店の営業力が上がる
加盟店を増やしたり加盟店の業績を上げたりするためには、しっかりとした商品の差別化やシステム作りが必要となります。これらを進めるためには、直営店で試行し結果を出すことが必要です。すると、必然的に直営店の営業力が上がりますので、経営の安定化が期待できます。
利益構造が良くなる
フランチャイズ本部は、加盟店からの加盟金やロイヤリティなどが収入源となります。これらに対する原価は基本的に低く、加盟店が増えるほどに利益率が上がる構造となっています。飲食業界は店舗での営業利益が比較的低い中で、フランチャイズビジネスが原価率を下げるので、利益構造を良くすることが可能です。
デメリット
ノウハウ等の流出リスクがある
本部は加盟店に対して、商品やサービスの提供をしなければなりませんので、その際にノウハウや技術の流出リスクが高まります。独自の調理法や秘伝のレシピなどが流出すると、競合するフランチャイズ店に模倣されたり、加盟店がそれらを武器に独立したりと自社への脅威となりかねません。それを避けるためには、調理済みのものを提供するなどして対策を取る必要があるでしょう。
加盟店との協調が難しい
本部と加盟店は、利益を共有できる場合だけではありません。時には利益が相反することもあれば、加盟店で独自の施策を取りたいこともあるでしょう。特に加盟店の業績が振るわない時は、本部に対して異を唱えることも増えるかもしれません。こうならないためには、常に本部は加盟店との関係を密にしておく必要があります。そのためには、直接加盟店と接するスーパーバイザーの役割が大きくなるでしょう。
初期の加盟店獲得が困難
メリットとして速やかな多店舗展開ができることを挙げましたが、それが実現できるのはある程度加盟店が増えてからということになるでしょう。加盟店が少ないうちは、存在を認知してもらうことやビジネスモデルが成果の出せるものと認めてもらうことが難しいはずです。初期の加盟店獲得をスムーズに進めるためには、魅力的でわかりやすいビジネスモデルにしたり、他のフランチャイズよりも加盟しやすい加盟金やロイヤリティにしたりといったことが必要でしょう。
フランチャイズ展開するための条件
フランチャイズ展開するためには、加盟したいと思ってくれる個人や企業がいなければなりません。では、加盟したいと思ってもらうには何が必要かといえば、加盟店になれば利益を得られるという信頼性です。以下では、その信頼性につながるポイントをお伝えします。
商品力が高い
料理や飲み物がおいしい、見た目が良い、コストパフォーマンスが高いなど、集客力を持った商品であることが必要です。さらに、お客様が競合のお店と比較した際に負けないだけの差別化がなされていなければ、加盟店になるメリットを感じてもらえないでしょう。また、お客様に飽きられないための商品開発力やメニュー計画なども、加盟を検討する際のポイントとなってきます。
指導力が高い
フランチャイズは加盟契約を結んだ時点で終わりではなく、そこから加盟店が成果を出し、業績を伸ばすための指導を本部が行っていかなければなりません。その時に重要なのが、スーパーバイザーの指導力となります。そのためには、優秀なスーパーバイザーが不可欠です。当初はオーナー自らが行うことになるでしょうが、規模が大きくなればスーパーバイザーの育成をしなければならず、その成否がフランチャイズ展開のカギとなるでしょう。
収益性がある
ロイヤリティを支払う必要があるフランチャイズでは、通常の飲食店よりも高い収益性がなければ加盟をしたいと思われないでしょう。そのためには、営業利益が高くなるビジネスモデルを構築しておかなければなりません。2007年の経済産業省の発表によると、飲食店の平均営業利益率が8.6%となっています。ロイヤリティの支払いを売上の3%と仮定して考えると、12%以上の営業利益率としておく必要があるでしょう。
参考:経済産業省 売上高営業利益率
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/syokozi/result-2/h2c6klaj.html
再現性がある
現在自社で経営している店舗が高い業績を上げていたとしても、再現性がない場合は加盟を希望する人は少ないでしょう。たとえば、腕の良い職人さんや専門的な知識を持ったスタッフなどのおかげで結果が出ている場合、同等の従業員を雇用するのが難しいからです。このような属人的要素に頼らなくてもよいと証明するためにも、直営店を数店舗増やしてからフランチャイズ化する企業もあります。
フランチャイズ加盟店と良好な関係を築くポイント
フランチャイズ展開を成功させるためにはしっかりしたビジネスモデルや運営システムが重要ですが、加盟店の存在も同じく大切です。加盟店との不必要な対応により運営が妨げられないよう、以下のことに気をつけてください。
しっかり準備をしてから募集する
契約内容を含めて、加盟店を募集する際は事前に詳細を決めておきましょう。契約後に条件の変更など先方に不利な申し入れをすることは、関係を悪化させる原因となりますので、避けなければなりません。お金の流れや役割分担など細かいところまで確定させて、後のトラブルにならないようにしておきましょう。
対等な関係性を築く
本来、フランチャイズの本部と加盟店の立場は対等です。しかしこの関係が崩れると、運営がスムーズにいかなくなってしまいます。
たとえば、加盟店が本部の対応を高圧的だと感じると不信感へとつながります。それが契約解除につながることもあるでしょう。逆に、本部が頼りない素振りを見せると、加盟店からの信頼を損ないます。そうなると本部からの提案を履行しないといったことにもなりかねません。
本部と加盟店が対等にビジネスを行っていけるよう、良好な関係を保っていきましょう。
今回は、飲食店のフランチャイズ本部となって運営をするための基礎的なことをお伝えしました。
メリット・デメリットの両面がありますので、それらを把握した上でフランチャイズ化するとよいでしょう。またその際には、自社に加盟店を引き付ける条件があるかもチェックしてみてください。
フランチャイズは、本部の力だけで成果を上げられるものではありません。加盟店との関係を良好に保ちながら、業績につながる運営をしていきましょう。