プレスリリースという名前は聞いたことがあると思いますが、飲食店においては大手のチェーン店以外ではあまり馴染みがないものでしょう。
プレスリリースとはメディアに向けた資料のことで、これをきっかけに取材をしてもらうためのものです。メディアに取り上げられればお店の知名度が上がります。しかもやり方によっては無料。それならば、上手に活用したいものです。
今回はこのプレスリリースに関して、概要や出し方、活用アイデアなどをお伝えします。できるだけ費用をかけないで効果的にお店のことを知ってもらいたいとお思いでしたら、ぜひ最後までご覧ください。
飲食店にとってプレスリリースとは
飲食店にとってプレスリリースとは、新規開店や新商品・新サービスの発売などの情報、つまりネタをニュース素材としてメディアが使いやすいようにまとめたものです。飲食店が、メディアを通じて一般の人にメッセージを届けるために利用できます。メディアはその資料を参考にニュース価値を判断して、取材に訪れるなどをした後、記事や番組などで流します。
一見すると広告に似ていますが、広告は費用を支払えばある程度自由にメディアで流すことができるのに対して、プレスリリースではメディアが読者や視聴者に伝えたいものしか取り上げられません。つまり、あくまでも情報としての価値がなければ、記事や番組には採用されないということです。
ですから「お客様に来てもらいたい・買ってもらいたい」など、飲食店の思いが前面に出ていては取り上げられにくいものです。メディアが発信した際に、読者や視聴者から喜ばれる内容や社会にインパクトを与えられる内容が求められていますので、それを意識して活用するようにしましょう。
飲食店のプレスリリースの出し方
プレスリリースといっても出し方はシンプルで、資料を作成して、それを目当てのメディアに送るだけです。そこで資料がメディアの担当者の目に止まれば、取材依頼、取材と進んでいきます。
ここでは、メディアにプレスリリースを送るところまでを説明します。
プレスリリースの作り方
プレスリリースを作る際に重要なことは、伝えたいことをシンプルにすることです。できるだけ多くのことを伝えたいという気持ちになるかもしれませんが、詰め込みすぎるとポイントがボケて、担当者の興味を引けなくなり、ニュースとして取り上げられにくくなってしまいます。情報としての価値が最も高いと思える内容に絞って訴求しましょう。
全体のボリュームもA4用紙1枚か2枚程度に収めましょう。メディアの担当者は、数多くのプレスリリースに目を通さなければなりません。長いものだと読む気力が削がれてしまいますので、要点を簡潔に伝えるようにしましょう。またお客様に向けた表現にならないように気をつけてください。
プレスリリースの代表的な構成は以下のとおりです。順に説明します。
冒頭部
タイトル
画像
概要文
本文
店舗情報、問い合わせ先
冒頭部
左上に宛先、右上に日付を記入します。
宛先は、できれば個別の名称を「〇〇テレビ〇〇部〇〇様」のように書くのが理想ですが、難しい場合には「プレスリリース」や「報道関係者各位」のようにプレスリリースであることがわかるように記入しましょう。
タイトル
伝えたい内容を短くまとめた文章であり、広告でのキャッチコピーにあたるものです。ただし、キャッチコピーでは主観的な言葉や大げさな表現がある程度許されますが、プレスリリースでは避けるべきです。担当者にニュース価値があるかを判断してもらうためのものなので、事実に基づいた客観的な表現を心がけましょう。
とはいっても、「新規性」「話題性」「意外性」はニュースにとって重要なので、事実であれば「〇〇初!」や「〇〇で一番!」といった表現は積極的に使ってください。また、数字を使うと客観性が出るだけでなく注意も引きやすいので、数値化できるものは数字で表現するようにしましょう。
画像
プレスリリース内には、必ず画像を入れてください。その際は、担当者が内容をイメージしやすいものを使うようにしましょう。読者や視聴者の興味をそそる画像が他にもあれば、入れておくと取材されやすくなります。
概要文
内容を数行程度でまとめたものです。いわゆる5W1H(誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように)と(いくら)の要素を入れて、端的に表現してください。タイトルと概要文だけで担当者の心を掴めることが理想です。
本文
タイトルと概要文で興味を持った担当者に対し、さらに詳しい内容を伝える部分です。商品開発秘話などの、記事や番組をより深い内容にするための補足情報を中心に記入しましょう。ただし、プレスリリースの内容は絞らなければなりませんので、ここで余計な話を入れて話題をブレさせないように気をつけてください。
店舗情報、問い合わせ先
お店の名前や住所、電話番号、メールアドレスなど必要な店舗情報は最後にまとめて記入します。
また、担当者が取材依頼する際に悩まないよう、誰に問い合わせをすればよいのかも明記してください。
プレスリリースの送り先
プレスリリースの送り先としては、一般的に以下のメディアがあります。
テレビ局
ラジオ局
番組制作会社
新聞社
雑誌出版社
Web媒体
もちろん、できるだけたくさんのメディアに送れればそれに越したことはありません。しかし実際には、人的・時間的な制限があってすべてに送ることはできませんので、優先度の高いところに絞って送ることになります。
優先度を決める際には、今回のプレスリリースの内容がどのような人に届いてほしいのかを考えます。これらのターゲットとなる人が普段目にしている、耳にしているメディアに取り上げてもらえるのがベストなので、ターゲット層に馴染みのあるメディアに絞って送りましょう。
プレスリリースの送り方
メディアによって最適な送り方は異なります。すべてをお伝えできませんので、ここではテレビ局・ラジオ局と新聞社、雑誌社について説明します。
テレビ局・ラジオ局
テレビ局・ラジオ局は一つの局で複数の番組を放送していますので、まずはどの番組に取り上げてほしいのかを決めましょう。番組の内容とプレスリリースの内容がマッチしていることを確認した上で、局の代表電話に連絡をしてください。そして「〇〇という番組にプレスリリースを送りたい」旨を伝えて、連絡先を聞いてから、プレスリリースを送付しましょう。
新聞社
新聞社の場合もまずは代表電話に連絡します。そして、プレスリリースの内容を伝えた上で「このプレスリリースだとどちらの部署に送るとよいでしょうか」と尋ねてください。新聞社は複数の部署に分かれており、プレスリリースの内容にふさわしい部署に送らなければ採用されにくいという事情があります。プレスリリースの内容を正確に伝えた上で、指示に従いましょう。
雑誌社
雑誌社の場合は、編集部へ直接郵送するとよいでしょう。この時におすすめのやり方があります。お店のあるエリアを販売地域とした地方誌に限ったものなのですが、お店で使える「お食事券」や「招待券」を同封し「読者プレゼントに使ってください」と添えてください。多くの雑誌が読者プレゼントを行っているので、そのためのプレゼントが手に入ることは雑誌者の人に喜ばれます。紙面に取り上げられる可能性も高まるでしょう。
飲食店で使えるプレスリリースのアイデア
プレスリリースとは、メディアに対してニュースのネタを提供するものだということがおわかりいただけたでしょう。
そこでこのように思われたのではないでしょうか。
「ニュースになるネタがないと、プレスリリースを送れないのかな」と。
たしかにそのとおりです。そして、都合よくネタになる出来事があるとは限らないでしょう。
それならば、ネタになるものを見つけ出してください。もちろん嘘をついてはいけませんが、どんなお店も探せばネタとなりそうなものはあるはずです。
ここでは、ネタを見つけるための切り口を紹介します。
商品を切り口にする
最も見つけやすいのが、商品を切り口にするものでしょう。
あなたのお店にはニュース性のある商品はないでしょうか。たとえば、地元特産のフルーツを3種類使ったスイーツであったり、シェフがイタリアで修行時代に下宿先のマンマから教わった味を再現したパスタであったりです。自分では気づかないものがニュース価値を持っている場合があります。それが見つかれば、あとはプレスリリースにするだけです。
もちろん、新しく商品を作ることもアリです。「新規性」「話題性」「意外性」などを盛り込んで、ニュースとして取り上げてもらえそうな商品を開発すれば、ネタが出来上がります。
お店を切り口にする
お店のニュース性を訴えるのも有効です。
たとえば新規開店などはそれだけでニュースになりますので、これから新たに出店するのであれば、それでプレスリリースを出すことができます。他には、少し前であれば感染症対策として店内全席を完全個室に改装したというのも、ニュースにできたはずです。
特殊な調理器材を導入しているとか、貴重な木材をカウンターとして使っているとか、探せば何かが見つかるかもしれません。お店の内外にネタになるものがないか、ぜひ探してみてください。
人を切り口にする
あなたのお店には、特徴のある人はいませんか?
もちろんあなたでもいいですし、他の従業員でもいいです。前職が飲食業とはまったく関係ないとか、過去の経歴がすごいとか、働いている人に話題性があればメディアに取り上げられるかもしれません。
人は物語が好きなので、紆余曲折があって今に至るというような物語性を持ったスタッフというのもよいでしょう。他にもメディアが注目しそうなスタッフが入れば、ネタにしてみるとよいかもしれません。
今回は、飲食店でのプレスリリースの活用法ということでお話ししてきました。
情報を提供し、それを取り上げてもらうことでお店の知名度を上げていくものでした。大事な点は、広告のような内容にはせず、担当者にニュースとしての価値を伝えることです。メディアもネタ探しには苦労しているので、良いネタを提供できると喜ばれるでしょう。
はじめのうちはなかなか採用されないかもしれませんが、うまく活用できると集客効果が高いので、いろいろな方向性を探りながらチャレンジしてみてください。