飲食店で働いている人の多くが、「おいしい料理やドリンクを提供すれば、お客様は来てくれる」と考えがちです。しかし、お客様がお店を選ぶ際に求めているのは、味の良さだけではありません。これについては、「人気のお店が一番おいしいお店とは限らない」という実例に心当たりがあるでしょう。
では、何故味以外で選ばれるのか?
その理由の一つがブランドです。ブランドとは、お客様が他店よりもあなたのお店を選ぶポイントであり、このブランドを確立するための活動がブランディングです。
今回は、ブランディングとは何か? なぜブランディングが重要なのか? ブランディングの具体的な方法などについてお伝えします。
あなたのお店をより繁盛させるのに役立つ内容になっていますので、ぜひ最後までお読みください。
ブランディングとは?
ブランディングとは、商品やサービスなどを競合のものと区別するための要素である、「ブランド」を確立するための様々な活動を指します。飲食店であれば、他のお店よりも魅力的であることを明確にするものといえるでしょう。お店のイメージ作りのために重要なものであり、お客様があなたのお店をどのように記憶し、認識するかに影響します。
ここで大切なのは、ブランディングは高級店に限ったものではないということです。リーズナブルなお店であっても、他と区別され選ばれる理由を持っている場合にはブランディングができているといえます。
ブランディングの対象には、ロゴやキャッチフレーズ、内外装をはじめ、特定の商品やサービス、雰囲気など、様々なものが含まれます。お店を特徴づけるものであるため、他のお店から際立たせ、お客様に記憶されるように、コンセプトの一貫したブランドを作ることが大切です。
ただし、ロゴやキャッチフレーズでのブランディングは、コストがかかったり効果が出るまでに時間がかかったりと中小規模の飲食店では難しい点があります。したがって、規模によらずできるのは、商品やサービス、雰囲気によるブランディングなどとなるでしょう。
また、価格の安さがブランド価値となることもありますが、これができるお店も限られます。
そのため今回は、商品やサービス、雰囲気でブランディングを行ない、低価格競争に巻き込まれないようにすることを想定して話を進めてまいります。
なぜ、飲食店にとってブランディングが重要なのか?
飲食店にとってブランディングが重要な理由の、代表的なものは以下の3つとなります。
・新規顧客の獲得につながるから
・再来店を促し、リピート回数を増やせるから
・客単価の向上に貢献するから
売上の公式は「売上=客数×来店頻度×客単価」です。ブランディングは売上につながる要素の全てを良くすることができることがわかるでしょう。
つまり、ブランディング次第で、売上を向上させられるということです。
それぞれの項目について深掘りしていきます。
新規顧客の獲得
まず、ブランディングがしっかりしていれば、見込み客がお店を見つけやすく、覚えてもらいやすくなります。飲食店は数多く存在するため、お客様がどの店を選ぶか迷うことがあります。
そこで、他店と差別化された魅力を感じてもらえれば、選ばれやすくなるでしょう。
リピート回数の増加
第二に、ブランディングは、顧客がお店に対する愛着心を高めるのに役立ちます。「あなたのお店にしかないもの」を感じ取れるからです。
あなたのお店で心地よい体験をし、十分なブランド価値を実感したお客様は、再び来店する可能性が高くなります。
客単価の向上
最後に、ブランディングは、一人のお客様の利用金額を高めることに貢献します。人は代替のきかないものには、より多くのお金を使ってもよいと考えるからです。
結果的に、お店の売上を伸ばすのにも役立ちます。
飲食店ブランディングの具体的な方法
ブランディングを行っていく上で、起点となるのは想いです。どのような体験をし、何を感じてほしいかといった願望をまずは言葉にしましょう。
次にそれを、コンセプトとして一貫した考えにまとめてください。
最後は、そのコンセプトに従った具現化を行ないます。
それぞれについてお話しします。
想いを言葉にする
まず、あなたのお店が何を重視するかを明確にする必要があります。これは、どのような体験を提供するか、スタッフが何を優先すべきかを決めるのに役立ちます。
次に、「家に帰って来たような気分になってもらいたい」のように、お客様にどうなってほしいかを明らかにしましょう。
コンセプトに落とし込む
続いて、先ほど書き出した想いをコンセプトとして、短い言葉にまとめます。
コンセプトとは「あなたのお店の存在意義」を端的に表現したものといえます。お店の営業の仕方や雰囲気などのあらゆるものが、このコンセプトに沿ったものでなければ、お客様に違和感を与えることとなるでしょう。
したがって、ブレがなく一貫性を保ったコンセプトにすることが重要です。
具体的な施策にする
最後に、コンセプトに合った施策を決めていきます。大きくは以下の3点にまとめられますが、大事なことはそれぞれに独自性がありながらも統一感があることです。
各項目について説明します。
商品の価値を高める
飲食店である以上、提供する飲食物の価値が高くなければなりません。差別化し、他のお店よりも高いブランド価値を提供することが大切です。
ただし先述したように、お客様は味だけでお店を選ぶわけではありませんので、味以外の要素で差別化することも必要です。
商品というモノではなく、他ではできない体験を提供できれば、付加価値をより高められるでしょう。
スタッフのスキルを前面に出す
飲食店では、飲食物以外のサービスも差別化の要素となります。
たとえば、ワインを提供しているお店であれば、ソムリエがいるだけでブランド価値が高くなるでしょう。
他にも、技術力やホスピタリティの高さなどで付加価値を高めることが可能です。ここでも、特別な体験をしてもらうことに注目するとよいでしょう。
過ごす時間の価値を確立する
一言で表すなら「雰囲気を良くする」ということです。
商品やサービスが良くても、雰囲気が良くなければ、お客様の満足度は上がりません。
最も感覚的で言語化しづらいところですが、あなたのお店で過ごす時間を特別なものだと感じてもらえることは、ブランド価値が高い証拠といえるでしょう。
飲食店ブランディングの具体的な方法
ブランディングの具体的な方法をお伝えしましたが、ブランディングは独立して成立するものではありません。競合店やお客様との関係性があって、初めて成果に結びつきます。
ここでは、そのための施策についてお伝えします。
魅力を際立たせる
いくらブランド価値が高い商品やサービスなどを提供できたとしても、競合するお店とかぶってしまってはあまり効果を得られません。ですから、競合店の調査を行ったうえで、他にはない魅力をアピールできるようにしましょう。
ここで特にお伝えしたいのは、必要な独自性は競合店との比較で決まるということです。
つまり、そこまで特別なものでなくても、お客様が欲するもので競合店になければ十分です。
あくまでもお客様目線で、魅力を際立たせましょう。
お客様とマッチさせる
たとえブランドの魅力を際立たせたとしても、商圏内にその商品やサービスを求めるお客様がいなければ、売上には繋がりません。
ですから商品やサービスを、十分なニーズがあるものにする必要があります。
近隣や競合店を調査して、お客様の求めるものに合わせていきましょう。
お客様に伝える
どれだけブランド価値を高めても、お客様に認知されなければ効果は得られません。
魅力ある商品やサービスがあり、それを求めるお客様がいるのなら、その人たちにしっかり伝えることが大切です。
知られていないものは存在しないのと同じなので、広告や店頭掲示、口頭、SNSなどあらゆる手段を使って、広める努力をしていきましょう。
飲食店にとってブランディングは、お客様が記憶し、認識できる同一性を作ることができるため重要です。
ブランディングには様々な方法がありますが、自分のお店に合ったものを選ぶことが大切です。また、あなたのお店ならではといったものを提供したり、優れたサービスを行ったりすることで、他店との差別化をはかる必要があります。
これらの対策を講じることで、競合店よりもお客様に選ばれるお店にすることができるでしょう。