飲食をはじめとする各業種で、店舗内外に掲げられる宣伝用の掲示物をPOP(ポップ)といいます。これは「Point Of Purchase advertising」を短くしたもので、「購入場所の広告」という意味です。
飲食店を例に挙げると、これから入るお店を決める人、すでにお店に入っている人に向けた広告となります。すでに購入行動に移っている人へ宣伝するので、高い効果があるのが特徴です。
しかし、それだけの効果があるにもかかわらず、多くの飲食店で見過ごされているようにも感じます。
そこで、今回はPOPの種類やPOPで得られる効果、効果的なPOPの作り方などを解説してまいります。
これまでPOPにあまり力を入れてこなかった方、これからPOPに力を入れようと思っている方はぜひ最後まで読んで、役立てていただけると幸いです。
飲食店のPOPは2種類
掲示する場所によって、POPは「店頭POP」と「店内POP」の2種類に分かれます。
それぞれの特徴が異なりますので、この違いを認識していただくことが各POPの効果を高めることとなります。
店頭POP
店頭POPは「客数」を増やすことを主な目的としています。ですから、店の前を通りかかった人に店の存在を知らせ、入りたいと思わせることが必要です。
多くの飲食店が店頭POPとして、黒板やポスターなどを使用しています。
店の前を通る人がターゲットなので、店頭POPは一瞬のインパクトが大事です。目を引く写真や瞬時に読み取れてかつ心を掴むキャッチコピーが重要となります。
店頭POPを掲示するのは、お店の近くを通る人の目につきやすいところです。店舗の入り口周辺が一般的ですが、通行人の目につきやすい場所であれば、入り口から離れていても掲示しましょう。
店内POP
店内POPは主に「客単価」を上げるためのものです。追加の注文を促したり、注文してほしい商品をお知らせしたりして、一品でも多く、より単価の高いものを注文してもらうために使います。
店内POPには、メニューへの差し込みやテーブルテント、ポスターなど様々なバリエーションがあります。
店内POPは、店内にいるお客様がターゲットなので、時間の余裕があり、ある程度の文字量を読んでもらえます。ですから、商品のこだわりや商品説明など注文につながる内容を盛り込むのがよいでしょう。
店内POPの掲示場所は、テーブルの上や店内の壁、化粧室の中などいろいろです。この中でも、テーブル上が最もお客様の目に触れる場所であり、他はそれよりも劣ります。最も力を入れるものをテーブル上に配置するなど、お客様の視認性を意識して各POPを配置してください。
このように、店内POPは主に客単価を上げるために利用されますが、お店で運用しているSNSへの登録を促すことで、集客につなげることも可能です。
店内POPは、お客様の目に触れる時間が長いので、アイデア次第で様々な目的に利用できます。どのように活用できるかいろいろと考えてみましょう。
POPの目的
POPを掲示する目的を具体的に説明します。目的を意識してPOPを作成すると効果が高まりますので、POPを作る際にはどのような目的を持たせるのかを頭に浮かべながら作業を進めてください。
集客につなげる
集客は、主に店頭POPの役割です。
あなたも、店頭のPOPや看板がきっかけで初めてのお店に入店した経験があると思います。このように、店頭POPが集客に及ぼす影響は大きいのですが、そこに通行人を誘引する工夫を加えると効果はさらに高まります。ただメニューや営業時間などを知らせるものではなく、店頭POPを集客媒体だと考えるとそこで表現する内容も変わってくるでしょう。
しかし、集客を目的とするのは店頭POPだけではありません。
先程も触れましたが、LINEをはじめとするSNSへの登録依頼は店内POPのほうが効果が高いでしょう。それは、落ち着いた環境のほうが登録操作をしやすいからです。配信を使った集客を促進するためには、店内POPでSNS登録の勧誘をしてみてください。
注文数を増やす
注文数を増やすために利用するのは、主に店内POPです。
例えば、最初の注文時には食べたいと思わなかったデザートも、POPを見ているうちに頼みたくなるかもしれません。ですから、注文数を増やすためのPOPはお客様の目につきやすいところに掲示しておくと効果的です。デザート以外のサイドメニューなども、お客さまの視線に入りやすくしておくと、追加注文の数が増えていくでしょう
望む商品に注文を集める
回転を早めたい商品や看板商品など、特に頼んでほしい商品に注文を集める目的で使うPOPです。
鮮度が重要な生の食材は時間が経つと商品価値が一気に下がるので、早めに売ってしまいたいものです。看板商品も、噂を広めてもらえば新たなお客様の来店につながるので、多く注文してもらいたいでしょう。
当然、どちらの商品も集客に力を発揮するはずですから、店内POPだけでなく店頭POPも利用して、注文を集めるようにしていきましょう。
店の好感度を上げる
例えば、お店の魅力やこだわりなどは、普通に営業しているだけでは、なかなかお客様に伝わらないものです。知ってもらえればお店の好感度は上がり、売上にもつながるはずですが、一人ひとりに伝えることはできません。そこで、役に立つのがPOPです。
店内POPには文章量が多くしっかりと内容を伝えられるもの、店頭POPには簡潔な文章でインパクトがあるものといった具合に使い分けることで、お店の好感度を上げることができます。
POPの作り方
POPは外注したものもよいのですが、自作したもののほうが個性を感じられ好印象を与えます。ですから、ぜひPOPを手作りしてみてください。
といっても、どのように作ればよいのか困ってしまうかもしれませんね。そこで、以下でPOPの基本的な構成をお伝えします。見ていただくとわかるように、とてもシンプルな作りです。あまり難しく考えず、気楽に作ってみてください。
写真・イラストを入れる
まず、写真やイラストを入れるようにしましょう。なぜなら見られる確率が上がるからです。
あなたも、印刷物に写真と文字がある場合、先に写真に目がいくのではないでしょうか。どんなPOPでも見られなければ効果を発揮することはありませんので、見られることは重要です。
例えば、飲食店のPOPであれば、おいしそうな料理の写真はひときわ目を引くでしょう。写真がなくても代用できるイラストがあれば、イラストでも十分です。場合によっては、写真よりも興味を引くこともあります。
これらは「なければPOPを作れない」というものではありませんが、注目度を考慮してできるだけ入れるようにしましょう。
キャッチコピーを含んだ商品名を入れる
写真が人を引きつける力は大きいものです。しかし、商品を魅力的に表現するキャッチコピーが、写真以上の力を発揮することもあります。
そのようなキャッチコピーが人を引きつけるのには理由があります。それは、見た人の興味を喚起する要素を持った言葉を使用しているからです。以下にその要素のいくつかを紹介します。
POPを作るときは、商品名や説明に加えてこれらの要素を含んだ吸引力の強いキャッチコピーを入れてみましょう。
なお、これらの要素は一つではインパクトに欠けると思えば、複数入れることで心に響きやすくなります。とはいえ、理想はシンプルでインパクトのあるものです。あまり複雑にしてしまうと、読んだ人が理解をしにくくなりますので、やり過ぎには気をつけてください。
有益性
「お得感」や「健康的」など利益を感じさせる要素です。わかりやすいのは、価格を訴求するものでしょう。商品購入の判断基準として重視する人も多いので、商品にこのようなメリットがあれば、キャッチコピーに入れてみましょう。
例)「このボリュームで“ワンコイン”!」
独自性
他のお店の商品にはない特徴を打ち出したものです。珍しい食材や独特の調理法など、お客様から見て他との違いが明確なほど効果があります。差別化できる点がないか、商品の特徴を探ってみてください。
例)「店主が朝釣ってきたばかりの◯◯」
話題性
人は流行っているものや他人が良いと言っているものに興味を抱きます。とはいっても、テレビや雑誌などの大きなメディアで取り上げられたものでなくとも大丈夫です。誰かが良いと言っているものであれば、小さなものでも話題性として盛り込んでみましょう。
例)「当店の人気No.1!」
新規性
日本人は新しい物が好きだといわれます。あなた自身も新しいものがあれば欲しくなってしまうことがあるのではないでしょうか。といっても、今まで全くなかったものである必要はありませんので、「新」や「初」という文字を入れられれば積極的に使っていきましょう。
例)「初物入荷!」
緊急性
人は損することを避けたいという思いが非常に強いといわれています。限定商品など、早くしなければ手に入れられなくなってしまうと思うと急に欲しくなるものです。そのため、この心理をくすぐることもとても効果的です。
例)「限定◯食!」
権威性
いわゆる「偉い人」や「専門家」と言われる人の意見は大きな影響力を持ちます。この人が言うのなら間違いないという心理が働くからです。このような人の評価があれば、キャッチコピーにも使わない手はありません。
例)「三つ星レストランで使用されている◯◯」
意外性
常識を覆しているものはそれだけで注目を浴びます。そして、様々な想像を掻き立て、実物を味わいたいと行動に移させます。今回紹介している要素の中でも特に人を引きつける力が強いので、ぜひキャッチコピーに使ってみてください。
例)「ピンク色をしたカレー」
物語性
物語もまた人の好きな要素です。同じ商品でもその裏にあるストーリーを知るだけで、良いものに思えてきます。どんな商品にも必ず物語はあるはずなので、興味を持ってもらえそうだなというものがあればキャッチコピーで使ってみましょう。
例)「完成までに5年の月日を費やした◯◯」
説明・価格を入れる
写真などで目を引き付けて、キャッチコピーで興味を持ってもらった後に、購入へと背中を押すのが商品説明と価格です。
商品説明は、POP自体の大きさや掲示場所などによって書き込める文字数は変わってきます。それぞれに応じた説明内容を記載してください。ここでも、先程お伝えしたキャッチコピーとして使える要素を入れるとよいでしょう。キャッチコピーには入れられなかったけど伝えておきたいことを書くのがおすすめです。
価格も忘れず入れてください。やはり価格がわからないものは注文しづらいからです。もちろん、キャッチコピーに価格が入っているのであれば、あらためて入れる必要はありません。
今回は、飲食店でも大いに活用していただきたいPOPについて解説してまいりました。
大きく分けると店頭POPと店内POPがあり、それぞれに役割が違います。また、機能も、集客や注文の誘導、お店のイメージ向上に分けられました。どの場所にどういう目的で掲示するのかで、伝えるべき内容も変わってきます。POPは自作でも十分な効果を発揮しますので、以上のことを意識して自分たちで作ってみましょう。
簡単に作成できるうえに効果も十分にあるPOPは、使いこなせると飲食店経営の大きな武器になります。デジタル手法にばかり目が行きがちな現代ですが、改めて活用して業績アップにつなげてください。