新型コロナウイルスの影響で売上を落とす飲食店が多い中、売上確保の施策として注目されているのが自動販売機です。 24時間稼働可能で、販売コストも低く、非接触・非対面という時代性などが重なり、徐々に店頭などに設置するお店が増えニュースなどでも取り上げられています。
本記事では、飲食店が行う自動販売機ビジネスのメリットや始め方などについて解説します。
新たな打ち手を模索しているのであれば、ぜひ参考にしてください。
飲食店が自販機を導入するメリット・デメリット
最近、飲食店で自動販売機を導入する事例を見聞きすることが増えてきています。自動販売機の進化により、扱える商品の幅が広がったのもそれを後押ししています。
自動販売機での販売は、飲食店にどのようなメリットがあるのでしょうか。デメリットとともに見ておきましょう。
メリット
24時間販売が可能
自動販売機は、基本的に24時間365日稼働が可能です。深夜・早朝などの店舗が営業していない時間でも販売を続けられます。通常なら営業中の店舗に来ることがない人にも、販売できる機会が広がります。
販売のための人件費が少ない
自動販売機での商品販売は、製造時以外の人件費が低く抑えられます。通常の飲食店では調理以外の販売時にも、商品の引き渡しや代金の受け渡しなどで人手が必要です。しかし自動販売機なら、商品を補充した後は人手がほとんどかかりませんので、コストが少なく済みます。
食材ロスが少ない
冷凍の商品を販売する自動販売機では特に、食材のロスを少なくできます。飲食店が通常の営業をする場合には、売れ残りは避けられず、食材の廃棄処分は珍しくありません。しかし冷凍した商品であれば、通常商品より長期保存が可能です。そのため廃棄物がほとんど出ず、食材をムダにすることが少なくなります。
非接触・非対面で販売可能
コロナ禍で人に触れることや、対面することが避けられるようになりました。それが、飲食店にお客様が戻ってこない理由の一つとなっていますが、自動販売機ではお客様がこれらを気にする必要がありません。そのために、飲食店の利用を控えている人にも購入してもらえる可能性が高くなります。
宣伝になる
食品の自動販売機は、徐々に普及しているとはいえ、まだ珍しい存在だといえるでしょう。そこで、食品の自動販売機を設置しているだけで、話題とされることが期待できます。さらに、前を通る人の目も引きやすいため、これまでお店に気づいていなかった人にも気づいてもらえる可能性が高まります。その結果、店舗に来店し飲食をしてくれる人が増える効果が見込めるでしょう。
デメリット
導入資金・運用費が必要
自動販売機の導入コストは障壁となるでしょう。冷凍食品用の自動販売機の場合、新品の相場は100万円以上です。メーカーや機能により価格は異なるとはいえ、決して安い金額ではありません。もちろんリースやレンタルという選択肢もありますが、長い目でみると月々の料金は購入する場合よりも割高になってしまいます。
さらに、機材費とは別に月々の電気料金が必要です。これらは1台あたり、およそ5,000~10,000円程度とされています。販売個数に関係なくかかる費用なので、注意しておきましょう。
なお、購入した自動販売機の修理費等は飲食店が負担することとなりますので、その点も考慮に入れておいてください。
飲食店の自販機ビジネスの始め方
自販機を導入する際には、きちんと決めておかなければならないことがあります。それらの代表的なものを説明します。
設置場所を決める
まずは、自動販売機を置くスペースが必要です。路面店などで店頭に設置できる場合は問題ないでしょう。
もし店頭に置けない場合でも、店内に設置することもできます。この際は、先ほど挙げたメリットの一部は得られなくなるでしょう。たとえば、24時間販売をすることは難しくなるかもしれません。しかし、家庭にストックしておきたい商品などであれば、店舗の営業中のみの販売でも一定数の購入は見込めるかもしれません。また、ランチのピークタイムに店舗が満席で販売機会を逃しているような場合にも、自動販売機で弁当を販売すれば売上が上がるので検討してみましょう。
商品を決める
何を販売するのかも、前もって決めておく必要があります。自分のお店で調理した商品を販売するだけでなく、他のメーカーが作っている商品を仕入れて販売することも可能です。調理の手間をかけたくないけど、空いている場所を有効活用したいのであれば、完成品の仕入れも検討してみましょう。
また、自店で調理した商品を売る場合でも、何を売るのかで用意すべきものやオペレーション、収益などが変わってきます。販売する商品についても、事前にしっかりと決めておきましょう。
機材導入の契約形態を決める
先述したとおり、自動販売機を導入するには機械を購入するケースとリース・レンタルをするケースがあります。また、購入する場合にも新品か中古品か分かれます。
購入する場合は、初期投資が高額になりますが長期で考えると割安になります。逆にリース・レンタルであれば、初期投資が低く抑えられますが長い目で見ると割高となります。購入かリース・レンタルかで月々の損益分岐点も変わってきますので、個別にシミュレーションが必要です。
庫内温度のタイプを決める
「商品を決める」で述べた件と関連しますが、販売する商品によって導入すべき自動販売機の庫内温度が異なります。冷凍食品には冷凍機能、冷蔵食品には冷蔵機能が必要です。庫内温度を変更できるものは、それだけ高額になりますので、商品に合わせて自動販売機の庫内温度のタイプを決めましょう。
飲食店が自販機販売を取り入れる際のポイント
自動販売機には、いくつかのオプションが用意されていますので、これらについて説明しておきます。また、販売する商品によっては自動販売機以外に別途機材が必要となります。他にも営業許可についても確認しておきましょう。
キャッシュレス対応をしているか
現在はキャッシュレス化が広く進んでおり、現金をあまり持ち歩かない人もいます。このような人たちが、たまたま自動販売機で商品を購入しようとしても、現金しか対応していないと販売機会を逃してしまうこととなります。QRコードや電子マネー、交通系ICカードなどに対応する自動販売機がありますので、売り逃さないためにもこれらの機能に対応したものがよいでしょう。
オンライン監視可能か
ドリンクの自動販売機では、商品の補充を業者が行ってくれるものが多くありますが、食品の自動販売機では、補充は自ら行うことが基本です。しかし、いちいち自動販売機の扉を開けて中の在庫を確認しなければならないようでは、負担が大きくなってしまいます。この問題を解決するのがオンライン監視機能です。インターネットを通して手元のパソコンやスマートフォンで、在庫数や販売状況などを確認できるようになっています。自動販売機の管理業務を増やしたくないのであれば、この機能があるかも確認しておきましょう。
別途機材が必要
自分のお店で調理した料理を冷凍して自動販売機で売る場合には、調理後に商品化するための「真空包装機」と「急速冷凍機」が別途必要です。自店調理での販売形態を考えているなら、これら機材の設置場所と導入費用も用意しておいてください。
営業許可
2021年の6月から食品衛生法が改正され、自動販売機での食品販売のハードルが下がりました。調理機能のない冷凍・冷蔵の自動販売機であれば、届出のみで設置可能となっています。しかし、保健所により判断が異なることもありますので、まずは管轄の保健所に相談をしてみてください。
参照:新たな営業の許可制度
今回は、飲食店での自動販売機ビジネスについて解説してまいりました。
多くのメリットがある反面、費用や作業の点での負担があることも押さえておく必要があります。また、オプション機能や別途必要な機材等にも注意しましょう。
新型コロナウイルスの影響は薄まりつつあるとはいえ、飲食店にかつてのようにお客様がもどってくるのはまだ先になるかもしれません。このような状況下で活路を見出すためにも、自動販売機の導入を検討してみてはいかがでしょうか。