夏場のテイクアウトが危険な理由とは
新型コロナウイルスの影響で注目を集めたテイクアウトサービス。今も多くの飲食店が積極的に導入を進めています。そんななかテイクアウト用のお弁当をつくり、店頭で販売する取り組みも話題に。売上を伸ばすチャンスと捉え、さまざまな飲食店が店頭でのお弁当販売に力を入れています。
ですが今後、そうした飲食店が注意したいのは「夏場のテイクアウト」です。夏場は気温の上昇によって食材の劣化が早くなります。特にお弁当の販売が加速するお昼時(11時~14時)は、1日のなかでも気温が高くなる時間帯。食材の劣化がさらに早まり、菌も増えやすくなるため、食中毒を招くリスクが高くなるのです。
夏場のテイクアウトには食の安全性を損なう要因が潜んでいます。何の対策もせずに店頭でお弁当を販売していては、思わぬトラブルを招くことにつながります。
食中毒の実例も
実際にコロナ禍のテイクアウトで起きた食中毒の例をご紹介します。
5月17日、神奈川県大磯町内で、テイクアウトしたお弁当を食べた人が食中毒を起こしました。5月18日、同県平塚市内の医療機関が平塚保険福祉事務所に報告したことで問題が明るみになりました。食中毒を引き起こした飲食店は17日、以下の9品をテイクアウトで提供していたようです(食中毒を招いた食品については現在も調査中)。
・棒棒鶏(バンバンジー)
・青菜とモヤシのサラダ
・油淋鶏(ユーリンチー)
・エビ入り八宝菜
・肉チャーハン
・豚カツ
・エビ蒸し餃子
・エビシューマイ
・鶏肉シューマイ
5月21日、この飲食店は営業禁止に。翌日の5月22日には解除されましたが、食中毒を引き起こしたことの代償は大きいものといえます。
この例からもお弁当を販売している飲食店は、食中毒のリスクが身近にあることを意識し、その対策を徹底する必要があります。
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/e8z/prs/r5398153.html
食中毒の発生について – 神奈川県ホームページ
夏場のテイクアウトでは食(材料)の知識と工夫が肝心
安全・安心の食事を提供するためには、「食(材料)の知識と工夫」が欠かせません。お弁当販売に取り組む飲食店は、以下の4つのポイントを覚えておきましょう。
何時間以内に食べたら安全か知る
一般的に料理の消費期限は調理後2時間以内が目安とされています。お弁当を提供する側は、この期限をきちんと覚えておきましょう。そのうえでお客さんに消費期限の注意を促します。2時間以内に食事をするよう伝えたり、お弁当に消費期限のシールを貼ることで、お客さんもいつまでに食べればいいかわかるはずです。食中毒の発生を防ぐためにはお客さんの協力も必要になります。消費期限が切れないうちに食べることを店側がしっかり示すようにしましょう。
一緒に詰めてはいけない食材を認識する
テイクアウトでは基本的に刺身などの「生もの」や「半生もの」を提供してはいけません。生ものや半生ものは傷みやすく、時間の経過とともに菌の繁殖を促してしまうリスクがあるためです。また、温かいものと冷たいものを同じ容器に入れるのも控えましょう。菌が増殖する原因になります。冷却が必要な食材については調理後、速やかに冷やし、別の容器で提供するようにしましょう。
すべてのお弁当を一斉に陳列しない
すべてのお弁当を一斉に陳列すると、売れ残りのお弁当は店頭に並べている時間が長くなります。お弁当の長時間放置は菌の増殖を促します。常温ならなおさら菌は増えやすくなります。お弁当は店頭で一気に陳列せず、一部は店内で冷やしておくなど、菌の繁殖を防ぐ対策をしながら保管しましょう。つくり置きではなく、オーダーが入ったあとに調理をする体制にすれば、長時間放置による菌の増殖を防げることにつながります。
清潔な状態で調理をする
食中毒を招く菌は調理スタッフの手・指、調理器具などを介して広がります。そのため、スタッフの手洗いや使った調理器具の洗浄は調理のたびに実施し、厨房の衛生管理を徹底しましょう。すでに実施している飲食店も多いと思いますが、テイクアウトの場合は時間を空けて食事をしてもらうことになりますので、より入念に衛生管理に取り組むことをおすすめします。
料理提供の幅を広げ、売上アップに貢献してくれるテイクアウトサービスですが、ちょっとした衛生管理の甘さでお客さんの健康を阻害する可能性もあります。気温が上がる夏は、そのリスクがさらに高まります。安全・安心の食事を提供するためにも、飲食店は菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」努力を心がけながら、テイクアウトサービスに取り組んでいくようにしましょう。
【参考】
https://www.asahi.com/articles/ASN5M3S97N5FULZU00B.html
急増テイクアウト、何がNG? 食中毒防ぐ店と客の知恵
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/e8z/prs/r5398153.html
食中毒の発生について – 神奈川県ホームページ
https://www.inshokuten.com/foodist/article/5776/
飲食店のテイクアウト、夏場は「食中毒」に注意。予防3原則に基づいた対策方法
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