飲食店に飲食物を持ち込む行為は、一般的にマナー違反とされてきました。
なぜ禁止されるかといえば、持ち込みはお店にとって大きなデメリットがあるからです。
しかしドリンクに関しては、持ち込みを許可するお店が増えているように思います。
ドリンクの持ち込みならば、飲食店にとってメリットがあるのでしょうか?
ということで今回は、
・そもそも飲食店はなぜ持ち込みを禁止するのか
・飲食店が持ち込み可能にしてどのようなメリットがあるのか
・持ち込みを受け入れる際にどのような条件にするとよいのか
についてお話しします。
ドリンクの持ち込みを許可しようかと考えているお店の方は、ぜひ最後までお読みください。
飲食店が持ち込みを禁止する理由
多くの飲食店が、特別な事情がない限り飲食物の持ち込みを禁止にしています。
しかしその理由については、お店の人であっても「常識だから」というだけで、あまり意識していないかもしれません。
改めて飲食店が持ち込みを禁止する理由を確認しておきましょう。
お店の利益が下がるから
お店の商品を飲食してもらうことで売上を作るのが飲食店です。座席はそのためにあり、お店はその飲食スペースに対し家賃を支払うなどをし、お客様へサービスを提供しています。
そのため売上につながらない飲食物を外部から持ち込まれることは、利益を押し下げることにつながります。それが持ち込み禁止の理由の一つです。
衛生上の問題
基本的に飲食店は、お客様が店内で飲食したもの全てに責任を負わなければなりません。
お客様自らが持ち込んだもので食中毒になったとしても、最悪の場合お店が営業停止などになってしまう可能性があります。
さらに食中毒を出したという噂が広まると、風評被害も大きくなります。
先ほどの理由よりも、こちらをより重視しているといえるでしょう。
ドリンクの持ち込みを許可する飲食店のメリット
飲食店に持ち込みをしてはいけないということが常識とされてきましたが、近年はドリンクの持ち込みを許可するお店も増えてきました。ということは、お店にとってのメリットがあるということなのでしょう。
では、どんなメリットがあるのでしょうか?
持ち込みが広まっている背景とともに、メリットについて探ってみます。
なぜ持ち込みが広まっているのか?
現在のような持ち込みの発端となったのは、飲食店がアルコールの販売許可を取りにくいオーストラリアです。
お店が酒類を提供できないので、持ち込みを許すことで来店を促したようです。
もちろん日本では直接的にオーストラリアの影響を受けたわけではなく、オーストラリアの持ち込み文化がワインの持ち込みを普及させ、日本でもワインを中心に持ち込みが広まりました。
ワインは他の酒に比べて種類が多く、それに比例してマニアックなファンの数も膨大です。これらの人たちにとって、お店には置いていない、自分好みのワインや特別なワインを仲間と飲めるというのが受けたのでしょう。このような持ち込みに対するニーズは、ワイン好きにとどまらず、今では日本酒好きの人たちにも広まっているようです。
またこれとは別に、自由にどんなお酒でも持ち込めるようにしてあるお店もあります。これはお店側の必要なリソース(ヒト、モノ、カネなどの資源)を減らしたいという思惑もあるようです。ただし実施しているのはごく少数であり、導入できるのも限られたお店だけになりますので、詳しく取り上げるのは別の機会とさせていただきます。
ということで本記事では、ワインや日本酒などのボトルに関して、持ち込み料を支払ってもらうことを前提にお話を進めさせていただきます。
ドリンクの持ち込みを許可するメリット
では利益を少なくする可能性が高いドリンクの持ち込みを許可するメリットは何なのでしょうか?
これから詳しく見ていきましょう。
その前に確認しておかなければならないのは、持ち込みのデメリットに食中毒の危険性がありますが、ドリンクにはこのリスクがほぼないということです。
料理に比べてデメリットが少ないのも、ドリンクの持ち込みが広まる理由になっていることはご了承ください。
集客につながる
ドリンクの持ち込みができることを前面に出しているお店はまだ少数です。そのため競合が少なく、持ち込み可というだけで選ばれる可能性が高い状態です。
どんなお店でも来客数が増えるとは言い切れませんが、お客様のニーズに合っていて、持ち込みできることが認知されれば、一定の集客効果があるはずです。
料理の売上につながる
持ち込みを許可しているお店にとって、利益面で最も大きなメリットがこちらでしょう。
基本的に持ち込みをするお客様は、自分にとっての特別なお酒をおいしい料理と一緒に味わいたい、もしくは親しい仲間と共に楽しみたいという人たちです。そうなると、料理の注文もしっかりすることが考えられます。しかも、このようなお客様は食に対しての関心も高いはずなので、料理の質に対してもより良いものを求めるでしょう。
つまりドリンクで得られる利益が少なくなったとしても、料理でその差額を埋められるということです。
場所と手間、リスクが減らせる
これらは、先の2つと比べると小さなメリットかもしれませんが、持ち込みをするお客様が多くなれば軽視できないものとなっていきます。
まず保管場所が必要ありません。お客様が持ってきてくれるのですから、在庫として抱えておく必要がないため、そのスペースを有効に使えます。
次に、発注や納品の手間もかかりません。数本程度ではそこまで変わらないでしょうが、数が増えれば実感できるほどに差が出てきます。
特にワインで顕著なのですが、欠陥品のリスクを負う必要がありません。まれにコルクに欠陥があったり、輸送・保管状況が悪かったりという理由で、ワインが傷んでいることがあります。この傷んだワインについて、仕入れ先によってはお店が損害を被らなければならないことがあります。
しかし持ち込みのお酒に関しては、お店が品質に対する責任を負わなくて済みますので、比較的大きなメリットとなります。
ドリンクの持ち込みを許可する条件
今回は、ワインや日本酒をボトルで持ち込むこと、かつ持ち込み料があることを前提にお話ししています。これらの前提で、決めておきたい条件について、4つほど説明します。
持ち込み料
一般的には、ボトル1本を持ち込むのにかかる料金のことです。
この持ち込み料をいくらくらいに設定するとよいのか、ワインを例にお話します。
現在ワインをボトルで販売しているお店であれば、それらの値付けに従うとよいでしょう。つまり、仕入れ値に粗利益額を加えたものが、お店での販売価格となっているはずですが、この粗利益と同じ額を持ち込み料とする考え方です。
この粗利益額を仕入れ値によって変えてある場合は、最も低い粗利益額の1.5倍程度としておくとよいでしょう。
ここで重要なのは「持ち込みをするとお得だ」と思われる料金設定をしないことです。このような料金設定をしてしまうと、安さ目当てのお客様が来店し、さらに利益を圧迫することとなります。
あくまでも持ち込みは特別なお酒を飲むためであり、いつもより贅沢な食事をして楽しむためにするのだという認識を持ってもらえるようにしてください。
料理
料理に関しても特別感を持ってもらうために、一定額以上のコース料理の注文を条件とするのもよいでしょう。先述したとおり、持ち込みの場合は通常よりもドリンクの利益が下がるものです。その分を料理に使ってもらえるようにしてください。
ただし、お店の利益が少なくなるという事情を察してくれるお客様であれば、条件を厳しくしなくてもよいかもしれません。ある程度は、お客様を見て融通をきかせてもよいでしょう。
持ち込める酒の種類
これまで、ワインや日本酒を前提としてお話してきましたが、他のお酒を持ち込みたいという人もいるでしょう。しかし、他のお酒に関してはケースバイケースであり、端的に説明はできません。
とはいえ持ち込みの場合は料理で利益を確保したいので、食事と合わせることが少ないウイスキーやブランデーなどの蒸留酒は遠慮してもらうのがよいでしょう。
その他
主にワインの場合になりますが、お店側がどこまでサービスできるか事前に決めておくとよいでしょう。
例を挙げれば、貸し出せるグラスの数についてです。
仮に10人組のお客様が10本のワインを持ち込むとします。この時、各ワインでグラスを変えて欲しいと言われたらどうでしょう。この場合は100脚のグラスが必要となります。そうなると、いただく料金とのバランスがとれなくなります。当然、オペレーションにも悪影響が出るでしょう。
料金内でどこまでのサービスができるのか、その範囲についても予め合意しておいてください。
今回は「飲食店がドリンクの持ち込みをできるようにするとどうなるか」というお話をしていきました。
もともと、飲食店にとって持ち込みはデメリットでしかなかったものが、ワインの持ち込みなどに関してはメリットが得られ、導入する価値があるとご理解していただけたかと思います。
しかし持ち込み自体は利益が少なくなるので、他でその穴埋めをするという考えが重要です。
持ち込みのメリットとデメリットのバランスを上手にとって、しっかりと利益につなげてください。