あなたのお店には明確なコンセプトがありますか。
もちろん、こんなお店にしたいといった理想像はお持ちでしょうが、それは紙に書くなどしていつでも確認できるようにしているでしょうか。また、他の従業員の方たちと共有できているでしょうか。
コンセプトは、お店の存在意義を明らかにしたものといえます。もし今まで、決めていなかった、書面に残していなかった、従業員で共有していなかったというのであれば、この機会にやってみませんか。
これらをすることで、より深く自分のお店を考え直すきっかけになります。
もちろん、新たに出店する際にもコンセプト作りは重要です。
今回は飲食店のコンセプトについて考えてみましょう。
なぜ飲食店にとってコンセプトは重要なのか?
コンセプトを日本語にすると「概念」、さらに噛み砕くと「大まかな意味」です。飲食店に当てはめると「どのようなお店かを一言で表現できるもの」となります。
では、飲食店にとってコンセプトが重要な理由とは何でしょうか?
コンセプトは飲食店作りの中核だから
コンセプトはお店の軸ともいえます。よく「軸がブレる」などと表現されますが、しっかりしたコンセプトがないお店は、この軸がブレている状態です。
ですから、この軸を固めるためにコンセプトを明確にしておく必要があります。
実際に、お店の内外装を含めた雰囲気やメニュー、価格などを、コンセプトに沿って決めなければ、お店のトータルバランスが崩れてしまい、お客様に違和感を与えます。
もし、お客様が増えない、売上が上がらないといった状況があるのでしたら、コンセプトに改善の余地があるかもしれませんので見直してみましょう。
コンセプトはあなたの店が選ばれる理由を表しているから
コンセプトはお店づくりに重要だというだけでなく、お客様があなたのお店に来店する理由を明らかにする点でも大事です。
どういうお店なのか、他のお店とどう違うのかなどを明確にし、前面に出していなければ、お客様には魅力的なお店とは映りません。
あなたのお店がお客様から選ばれるよう、他店との違いをしっかりコンセプトで表現しておきましょう。
飲食店のコンセプト作りに大事な考え方
それならコンセプトを作ろうと思っても、どこから手を付けてよいのか難しいものです。そこで、コンセプト作りをしやすくするフレームをご紹介します。
「5W1H」というものをご存知かと思いますが、これに2つ加えて「6W2H」にしたものが、抜け漏れなくコンセプトを作るのに有効です。
この「6W2H」を、飲食店のコンセプト作りに重要なものから順にお伝えします。
Whom(誰に)
いわゆる「ターゲット」のことです。
年齢や性別、趣味嗜好など、どのような人をあなたのお店に集めたいのかを考えてください。ただし、多くの人に来てもらいたいからといって幅を広げないようにしましょう。それだけコンセプトがズレる原因になってしまいます。
お客様像をできるだけ絞り込んで、明確にしてください。
飲食店経営はこのターゲットを集められるどうかにすべてがかかっていますので、他の項目ともすり合わせながら定めていきましょう。
Where(どこで)
いわゆる立地のことですが、すでにお店を営業しているのであれば、この項目は不要だと思われたのではないでしょうか。
それなのに、なぜ入れてあるのかといいますと、あなたのお店の周辺環境を今一度見直していただきたいからです。
あなたも開業前に周辺環境の確認をしているはずです。しかし、長く営業していると周りはどんどん変わっていきます。会社や施設、住宅などが変わっているかもしれません。
もし、あなたのお店の周りが以前と変わっているようであれば、先ほどのターゲットを設定し直すことも必要です。
What(何を)
この「何を」というのは、飲食店であれば、一つはメニューのことです。料理や飲物など提供するモノのことです。
しかしモノだけでなく、サービスや付加価値もここに含めてください。たとえば、「ゆっくりできる時間」や「食材から感じる季節感」などです。それを求めてくる人がいるようなものすべてを明確にしておきましょう。
How(どのように)
お店の雰囲気や接客スタイル、宣伝の仕方など、とても範囲の広い項目です。
長年営業しているお店だと、特別な意図がなく現状になっていることもあります。お客様がお店に持つイメージを左右したり、お店の売上に関係する部分であったりしますので、しっかり見直してみてください。
Who(誰が)
端的にいうと従業員のことです。
飲食店に来るお客様にとって「誰が」働いているかというのは大きな要素です。お店自体の性格を決定したり、雰囲気に大きく影響したりしますので、お店にとって大事な要素であることを再認識してください。
といっても、働いている人は簡単に変えられませんので、コンセプト作りを進める際には他の要素をここに合わせるようにしていきましょう。
Why(なぜ)
お店を出した理由や目的です。
おいしい料理を食べてほしい、楽しい時間を過ごしてほしい、といった理由があるかと思いますので、改めて明確にしておきましょう。
逆に、お客様があなたのお店を選ぶ理由を考えることも重要です。
なぜなら、あなたの理由とお客様の理由が一致していないかもしれないからです。そうであれば、あなたのお店は強みを活かせていないということになります。このズレがないか確認しておいてください。
When(いつ)
営業時間や店休日がこの「いつ」です。
もしかしたら、新たにランチを始めることでお店の認知度が上がりディナータイムの来店数も増えるかもしれません。また、定休日を変えることで売上が上がるかもしれません。
今のままでよいのか改めて見直してみてはいかがでしょうか。
How much(いくらで)
最後が「価格」であることに驚かれているかもしれません。
一般的に飲食店の価格は、原価率を30%以内に収めるとか、周りのお店に合わせるとか、早い段階で価格を決めてお店作りをすることも多いかと思います。
しかし、価格から決めると他の条件をそこに合わせていくことになり、肝心のターゲット像がお客様として集めたい人とズレることがあります。
あくまでも「誰に」が優先となりますので、価格はその後に決めるようにしていきましょう。
飲食店経営に活かせるコンセプトの作り方
コンセプトを作るための各要素を「6W2H」の形でお伝えしました。
しかし、これをただ頭で考えただけでは、上手にコンセプトを作るのは難しいものです。そこで、「コンセプトシート」というものを作って、それぞれの要素を視覚化し、見比べながら作業をすすめるとコンセプトを作りやすくなります。
少し面倒に感じるかもしれませんが、結果的に早く良いものが作れますので、ぜひやってみてください。
コンセプトシートを用意する
大きめの紙を用意して、そこに縦横3マスずつ、計9マスの図を書いてください。
これがコンセプトシートの枠になります。
真ん中のマスがコンセプトを書き出すところで、その周りの8マスが「6W2H」を書き込むところです。
各項目を書き込む
まずは、真ん中以外の8マスに先ほど説明した内容で「6W2H」を書き入れてください。
書き込む場所はお好きなようにしていただいてかまいません。
8マスすべてを埋めたら、その8マスの内容をまとめる形でコンセプトを真ん中のマスに書き入れます。といっても、いきなりコンセプトが思い浮かぶものではないでしょう。
その時は、8マスに書き込まれている言葉の中から、あなたのお店を表すのに重要だと思える言葉を抜き出して、組み合わせをいろいろと変えながら言葉を作り出します。
たとえば、Whoに「ビジネスパーソン」Whatに「旬の食材」Howに「くつろげる雰囲気で楽しんでもらう」と書いてあるとしましょう。それであれば、これらを足して「ビジネスパーソンに旬の食材を使った料理をくつろいで楽しんでいただく店」のようになります。
コンセプトには、すべての「6W2H」の要素を入れる必要はありません。
不要な要素を削る
これで完成ではありません。
というのも「6W2H」も「コンセプト」も、やりたいことを詰め込んだものになっているはずだからです。あれもこれもと詰め込みすぎてしまうと、結局軸の定まっていないコンセプトになってしまいます。それ以前に詰め込みすぎて、実現が難しいものになっているかもしれません。
ですから今一度、やらないことを決めていく作業が必要になります。
欲張らずに、できるだけシンプルになるように要素を削ってみてください。
各項目の調整をする
削りながら各要素を見直していると、噛み合っていない部分が見つかるかと思います。たとえば、ターゲットは50代女性なのに、ボリュームのある料理を提供しようとしていたりといった具合です。
最終的にコンセプトがブレのない1本の軸となるように、各項目の調整をしてください。
もしかしたら、大きな変更が必要になるかもしれませんが、そのような項目をそのまま残しておくといずれ大きなズレとなる可能性がありますので、ここで思い切って修整しておきましょう。
コンセプトに実効性を持たせる
やっとコンセプトシートも完成し、あなたのお店のコンセプトが決まったかと思います。
しかし、コンセプトは作って終わりではありません。
営業に使えるようにすることが必要です。
営業に活かす方法を考えてみましょう。
コンセプトをお客様に知ってもらう
先ほど、コンセプトはお客様がお店に来る理由を表したものと説明しました。それであれば、お客様にも知っていただくと、来店の動機がより強まるはずです。
ですから、メニューや看板などに記載してお客様に伝えましょう。
このとき、コンセプトが長くてお客様に伝わりにくいようであれば、キャッチコピーのように、さらに短い言葉にまとめましょう。
その際は、あなたのお店と競合店の違いを明確にしあなたのお店に来たくなる言葉を残してください。
コンセプトを従業員で共有する
せっかくコンセプトを作っても、従業員全員が理解し営業に活かさなければ効果がありません。
また、従業員によって理解度に差があれば、お客様が違和感を持つ原因ともなります。
ですから、全員が同じように理解できるように、更衣室にコンセプトシートを貼り出して常に確認できるようにし、定期的にミーティングを行って理解レベルを揃えるようにしましょう。
コンセプトと営業をすり合わせる
コンセプトどおりに営業ができているか常に確認をし、ズレがあれば営業を改善していきましょう。
一度作ったコンセプトは簡単に変えるものではありませんので、基本的には営業をコンセプトに合わせます。
とはいっても、コンセプトが明らかに現実から離れている、売上が上がらないという状況であれば、もう一度コンセプトを作り直すことも必要です。
原因がどこにあったのかを見極めて、適切な修正を加えましょう。
飲食店のコンセプトとは「どのようなお店かを一言で表現できるもの」であり、営業していく上での軸となるものでした。
コンセプトが定まっていないと営業でブレが出てしまい、さらに魅力を打ち出せていないためお客様に飽きられやすくなってしまいます。
ですから「6W2H」で自店のコンセプトをしっかり定めて、それに沿って営業することで魅力あるお店であり続けていただきたいと思います。
もちろん、これから飲食店を開業する場合にも、お店作りや営業を軌道に乗せるのに役立ちますので、最初にコンセプトをしっかり作っておくとよいでしょう。
この記事をコンセプト作りに活かして、繁盛店にしていただくことを願っております。