コロナ禍で多くの飲食店が苦しむ中、打開策として注目されているサービスがあります。
それはクラウドファンディング。
一般的な融資とは異なる資金調達の方法で、飲食店での利用例も増えてきています。
先行きが不透明な中、飲食店も様々な打ち手を模索していかなければなりませんが、クラウドファンディングは本当に使える資金調達方法なのでしょうか。
今回は、このクラウドファンディングについてお話ししてまいります。
クラウドファンディングとは?
クラウドファンディングとは資金調達方法の一つで、インターネットを通じ不特定多数の人から出資を募るものであり、いくつかの形式があります。
まずは、この概要を押さえておきましょう。
クラウドファンディングの仕組み
クラウドファンディングとは、起案者が自らのビジネスアイデアをサイト上でプレゼンテーションし、賛同した支援者に資金提供をしてもらうものです。起案者は、資金調達専門企業が開設しているサイト内でプロジェクトを立ち上げて出資者を募集します。
ほとんどのプロジェクトでは、支援者も支援に対して相応のリターン(返礼)を受け取れるので、一方的な支援ではなく双方にメリットがあります。自治体が行なっている「ふるさと納税」をイメージするとわかりやすいでしょう。
クラウドファンディングの種類
クラウドファンディングには、資金の質によりいくつかの種類があります。
代表的なのは以下のものです。
購入型
寄付型
融資型
ファンド型
株式投資型
購入型とは、支援者の提供した資金に対して起案者の商品やサービスをリターンとするものです。融資型などのように返済の必要がなく金利もかからないため、飲食店にとって利用しやすい形式です。多くの飲食店で用いられているのがこの形式なので、今回はこの購入型を前提に話を進めます。
ちなみに寄付型とは支援者が資金を寄付する形式で、おもに社会貢献を目的としたプロジェクトで用いられます。
融資型・ファンド投資型・株式投資型は、それぞれ金銭や株式などがリターンとなるものです。
購入型はさらに以下の2種類に別れます。
All or Nothing方式
事前に設定した期間内に目標金額を達成すると支援額を獲得できる方式です。もし目標金額に達しなければ、資金は全額支援者に返金され、リターンの提供も必要ありません。最低必要額がはっきりしていて、それに到達しなければプロジェクトの実行ができないものに向いています。
All In方式
目標金額に達しなくても期間内に集まった支援額を獲得できる方式です。支援者へのリターンは必要です。目標額に達しなくても実行可能なプロジェクトに向いています。
飲食店とクラウドファンディングの相性
先程は、クラウドファンディングを資金調達の方法としてご紹介しました。実際に多くの飲食店がこれを利用し資金を調達していますが、飲食店とクラウドファンディングは資金調達にとどまらない相性の良さがあります。
飲食店にとって資金調達以外のメリットとなる点をお伝えします。
お客様とのつながりを作れる
クラウドファンディングをきっかけとして、お客様との間につながりを作り出せます。コロナ禍でお客様と飲食店の接点が少なくなっていますが、支援者になっていただくことで関係が深まり、お店のファンにすることも可能です。
宣伝効果が期待できる
クラウドファンディング自体の認知は広まっているとはいえ、飲食店での利用はまだ珍しく興味を持ってもらえるはずです。そこで、SNSなどを使ってプロジェクトを広めることは高い宣伝効果が期待でき、お店の集客に繋がります。
新しい取り組みのテストができる
クラウドファンディングを利用すると、新しい商品やサービスを実際にリリースする前にお客様の反応を見られます。その反応によってその後の対応を決められますので、無駄が減り商品開発の効率が上がります。
+αの特典が得られる
クラウドファンディングサービス提供者によっては、コンサルティングなどのサービスが用意されているところがあります。資金調達をしながらこのようなサポートを受け、経営に活かせるのは大きなメリットです。
比較的簡単に利用できる
決済手続きなど多くのことをクラウドファンディングサービス提供者が代行してくれます。しかも、基本的にはオンラインで完結できますので、日常業務で忙しい飲食店にとって負担が軽くありがたいことです。支援者もシステム上の手続きだけで済ませられますので、双方にとって利用しやすくなっています。
飲食店がクラウドファンディングで成功するコツ
クラウドファンディングは、プロジェクトを登録しさえすれば簡単に資金が集まるというものではありません。プロジェクト自体の内容やリターン、支援者を集める施策などがしっかりしていなければ目標を達成するのは難しいでしょう。
クラウドファンディングを成功させるために必要なことを紹介しますので、これらを一つ一つ確実に進めていきましょう。
プロジェクトの内容を吟味する
まずは、プロジェクト自体が人を惹きつけるものでなければなりません。理解を得られるだけでなく、身近な人から後押しされるような内容にしていきましょう。
目的を明確にする
プロジェクトの目的がはっきりしていなければ、支援者はそこに将来性を見いだせないため、出資をしてくれないでしょう。それ以前に、サイトの審査に通らない可能性もあります。まずは支援者からの賛同が得られるようプロジェクトの目的を明確にしてください。
もし、プロジェクトの作成に自信がない場合は、サイト側でコンサルティングなどのサービスを用意している場合がありますので、そのようなサイトを選ぶとよいでしょう。
周囲の人に応援されるものにする
クラウドファンディングというと、インターネット上で不特定多数の人から支援してもらえると思っているかもしれません。しかし、実際にはよほど魅力的なプロジェクトで情報も広く拡散されるものでなければ、多額の資金調達は難しいものです。
そこで重要なのが、身近な人たちから応援してもらうことです。普段から付き合いがありお互いの信頼関係がある人であれば、共感してもらえ協力を得られやすいですから、プロジェクトの内容もこれらの人たちから応援をしてもらえそうなものにしましょう。
また、身近な人に応援してもらった場合、プロジェクト自体が期待通りにいかなかったとしても、関係が強まりお店のファンになってもらうことができます。資金調達だけでなく、周囲の人との関係性強化という視点でプロジェクトの内容を固めていってください。
リターンを魅力的にする
リターンは、支援者が資金の提供と引き換えに受け取る商品やサービスのことであり、多くの支援者にとって出資の判断の重要な決め手となります。ですから、リターンの選定は慎重に行なってください。
一般的にはプロジェクトに関係する商品やサービスを選びます。それも当該プロジェクトのためだけに用意されたものであれば、支援者の関心はより高まりますので、支援者に喜ばれそうなオリジナルのものを考えてください。
ただし、支援を得たいがために出資金に対して過剰となるリターンにならないように気をつけましょう。口コミなどで広まり、支援者を集める効果が高くなるのは確かですが、後々の負担が大きくなりすぎるようではよくありません。支援金額とのバランスを取って慎重にリターンを選んでください。
情報発信に注力する
プロジェクトを立ち上げたからといって、簡単に出資が集まるものではないということはお伝えしました。
そこで、目標達成のために必要なのが、自ら情報発信をしていくことです。多くの人にプロジェクトを知ってもらうことで支援者の数は増えていきますので、積極的にプロジェクトを広める行動をしていきましょう。
サイト任せにしない
もちろん、サイトでもプロジェクトの宣伝はしてくれます。しかし、サイトは他にも多くのプロジェクトを抱えていますので、どうしてもその中に埋もれてしまいがちです。ですから、自分でもSNSなどを使って多くの人にプロジェクトの存在を広めていきましょう。
サイトによっては、プレスリリースの配信や実店舗で展示を行なうなどの独自のサービスを展開しているところがありますので、使えるものは積極的に使っていきましょう。
また、プロジェクトに対する支援者のコメントなどがあればこまめに返信をし、活動報告なども行なって、関係性を保つことも忘れないようにしてください。
身近な人に声掛けする
先述しましたが、クラウドファンディングにおいて、身近な人は支援者となってもらえる可能性が高いものです。今現在のお客様だけでなく、以前お付き合いのあった人など少しでもつながりのある人には積極的に支援のお願いをしてみましょう。
お願いをすることに抵抗があるかもしれませんが、これはあくまでもリターンとの交換ですので、負い目に感じる必要はありません。一緒にプロジェクトを成功させることを楽しむくらいの気持ちで、上手に相手を巻き込んでいきましょう。
達成率を高くして支援者を呼び込む
人は達成率が低いプロジェクトよりも、高いプロジェクトのほうに興味を惹かれるものです。そこで、目標金額の設定を高くしすぎないようにしましょう。
仮に目標金額が100万円で支援額が50万円なら達成率は50%です。これが、目標金額が50万円であれば達成率は100%になります。プロジェクトを見た人は、達成率が高いもののほうが素晴らしい内容だろうと思うものです。すると、そこからさらに資金が集まりやすくなります。ですから、達成率が高く見えるように、適当な目標金額を設定しましょう。
同じく、プロジェクト公開直後に達成率が高くなるように事前に宣伝をしておくことも重要です。公開直後の達成率が他と比べて高ければ、やはり魅力的に見えるでしょうから、プロジェクトを公開する前に身近な人へ根回しをして、公開と同時に支援していただけるようにしておくと成功率が上がります。
飲食店に向いているクラウドファンディングサービス
クラウドファンディングはサービス提供者によって、扱っている種類やプロジェクトの流れ、手数料などが異なっています。それぞれの違いを比較しながら、自店にとって最もふさわしいサービスを選択してください。
以下では、飲食店におすすめのクラウドファンディングサービスをご紹介します。
Make Story(メイクストーリー)
URL:https://redish.jp/makestory/
飲食店特化型のクラウドファンディングサービスで、平均で800万円という高額の支援金額を獲得している実績があります。レストランクラウドファンティング専門のコンサルタントが在籍し、作業を請け負うことで100%の成功率も誇っています。
ページ制作などのサポートが充実していますので、本業以外にあまり手間を割けない飲食店におすすめです。
手数料:20%
Wonder Stream(ワンダーストリーム)
URL:https://wdst.fun/
国内で最も新しいクラウドファンディングサービスです。飲食店の利用者が5割を占めており、手数料も業界最安水準です。
パソコン等の操作が苦手な方のためのサポートプランも用意されていますので、安心して利用できるでしょう。
目標金額に到達しない場合に費用が一切かからない「All or Nothing方式」が用意されていますので、リスクを抑えてクラウドファンディングに挑戦したい人におすすめです。
手数料:9%(サポートなしプラン)/14%(サポートあり・WHappy・限定公開プラン)
CAMPFIRE(キャンプファイヤー)
URL:https://camp-fire.jp/
国内最大級のクラウドファンディングサービス。2011年にサービスを開始して以降、掲載プロジェクト数は52,000件以上、支援者数は延べ520万人以上、流通金額は450億円以上となっています。
飲食店関連をはじめとして、幅広いジャンルのプロジェクトを扱っており、知名度も高く安心感があります。
手数料:17%
近年、飲食店からも注目を集めるクラウドファンディング。資金調達だけでなく、お客様との接点増加や宣伝効果などでも飲食店にとってメリットの多いものだとご理解いただけたかと思います。
ただし、利用する店舗も増えている中、支援者にとって魅力あるプロジェクトでなければ成功が難しいことも事実です。
事前にプロジェクトの内容を練り上げ、自店にふさわしいサービス提供者を選択して、あなたのお店のステップアップにつなげていただきたいと思います。