近年、飲食業界でも多く取り上げられるようになったフードロス問題ですが、どのくらい関心をお持ちでしょうか?
フードロスとは、食べられるのに捨てられてしまう食品のことで、日本では年間500万トン以上ものフードロスが発生しており、そのうち、飲食店から出るフードロスは80万トンを超えるとされています。これは、金銭的にもかなりの金額が無駄になっているといえるでしょう。
つまり、フードロスを減らすことは、飲食店の経営にとって大きなメリットがあるということです。
しかし、フードロスを減らすためには、その原因や対策を知る必要があります。
この記事では、飲食店のフードロス問題について、その原因や対策を解説しますので、フードロスを減らすことで、コスト削減や環境保護につなげてください。
飲食店のフードロスとは
飲食店のフードロスとは、飲食店で発生する食品の廃棄物のことです。
フードロスは、食品の無駄になるだけでなく、廃棄物処理にもコストがかかります。また、フードロスは温室効果ガスの排出や資源の枯渇など、環境問題にも深く関わっています。
農林水産省が発表したデータによると、令和3年の推計値として、日本では年間約523万トンの食品が廃棄されています。これは、日本人一人あたりに換算すると約42キログラムに相当します。
また、外食産業から出ているとされるのが、全廃棄量の6分の1以上にあたる約80万トンです。
このように、飲食店のフードロスは社会的にも経済的にも環境的にも大きな問題となっています。
しかし、フードロスは必然的なものではありません。フードロスの原因や対策を知ることで、飲食店はフードロスを減らすことができます。
フードロスを減らすことは、コスト削減や環境保護だけでなく、お客様の満足度や信頼性の向上にもつながることになるはずです。
※参照 農林水産省「食品ロスとは」
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227_4.html
フードロスの原因
フードロスは、経営にも環境にも大きな損失をもたらしています。
では、なぜ飲食店でフードロスが発生するのでしょうか?
ここでは、飲食店におけるフードロスの主な原因をご紹介します。
仕入れすぎ・仕込みすぎ
飲食店のフードロスの原因の一つが、仕入れすぎや仕込みすぎです。
仕入れすぎは、食材の在庫管理が不十分で、必要以上に購入してしまうことで起こります。また、仕込みすぎは、予想客数や需要に合わせずに、過剰に料理を作ってしまうことが原因です。
これらは、食材や料理が期限切れや品質低下で廃棄されるリスクを高めます。また、仕入れや仕込みにかかる人件費や時間も無駄になります。
仕入れすぎや仕込みすぎを減らすためには、適切な在庫管理や需要予測が必要です。
保存方法の誤り
フードロスの別の原因となるのが、保存方法の誤りです。
保存方法が間違っていると、食材の鮮度や品質の低下が早まり、腐敗や変色などの問題が発生します。これにより、食材を使えなくなったり、お客様に提供できなくなったりすることにつながります。
また、保存方法の誤りは、衛生面や安全面にも影響し、食中毒や食品事故のリスクが高まる点にも注意しなければなりません。
これらは、飲食店の信頼や評判を失うことにもつながりますので、正しい保存方法を知り、徹底することが重要です。
オーダーや調理のミス
オーダーや調理のミスもフードロスの原因となります。
オーダーを間違えたり調理を失敗したりすると、当然ながら食材や料理が無駄になります。さらに、お客様に不快な印象を与えることもありますので、経営にとっての大きな損失です。
オーダーや調理のミスは、人為的なミスととらえられがちですが、システムやオペレーションに問題があることも考えられます。
同じようなミスが起こる場合には、これらの問題について探ってみるとよいでしょう。
食べ残し
食べ残しは、お客様の満足度やメニューの魅力にも関係するフードロスの原因です。そういった点で、提供する量、および料理の見た目や味などを慎重に検討する必要があるでしょう。
食べ残しは、お店にとって無駄であるのはもちろん、多くのお客様にとっても心の負担になります。
食べ残しを減らすために、提供量の調整やメニューの改善などが必要です。
フードロスを減らすための対策
フードロスの原因がわかれば、次はそれを減らすための対策を考える必要があります。
では、どのような対策が効果的なのでしょうか?
ここでは、原因別にフードロスを減らすための具体的な方法を紹介します。
仕入れすぎ・仕込みすぎを減らす
仕入れすぎ・仕込みすぎを減らすには、まず現状の食材の使用量や廃棄量を把握することが必要です。
そのためには、日々の在庫管理や廃棄記録をきちんと行い、需要予測やメニューの見直しをするのが効果的です。
需要予測では、過去の売上データや季節やイベントなどの要因を考慮して、必要な食材の量を算出します。
メニューの見直しでは、廃棄率の高い食材の使用を控えたり、料理の点数を減らしたり、使い回しできる食材や料理を増やしたりします。
これらの対策を実施することで、仕入れすぎ・仕込みすぎを防ぎ、フードロスを減らすことができるでしょう。
正しく保存する
保存方法のポイントは、温度管理と密閉です。
温度管理では、冷蔵庫や冷凍庫の設定温度を適切にし、食材ごとに最適な場所に入れることが大切です。
また、扉の開け閉めや食材の出し入れを最小限に抑え、庫内温度が上がらないようにもしなければなりません。
密閉では、空気に触れることにより起こる酸化や乾燥を防ぐために、ビニール袋やラップなどでしっかりと包むことが必要です。包装する際は、1回に使う量で小分けにするのもよいでしょう。
さらに、食材ごとに仕入れ日や仕込み日、期限などを記入することも重要です。この日付にしたがって、順番を守って使うようにしてください。
このように正しく保存することで、食材の鮮度や味を保ち、無駄なく使えるようになるはずです。
オーダーや調理のミスをなくす
オーダーや調理のミスは「属人的なものであり、各人が気を付けること」で済まされることが多いように感じます。しかし、個人の努力のみに頼っていては、限界があります。
そこで、システムやオペレーションを見直すことも必要です。人と仕組みの両面で、対策するのがよいでしょう。
オーダーや調理のミスをなくすためには、以下のような方法が有効です。
・オーダーを取る際には、明確に確認し、伝票やレジに正しく入力する
・調理の手順や分量を明確にするために、レシピやマニュアルを作成し、従業員に共有する
・調理の品質や進捗を管理するために、チェックリストやタイマーなどのツールを使用する
これらの方法を実践することで、オーダーや調理のミスを減らし、フードロスを削減することができます。
食べ残しを少なくする
食べ残しは、お客様次第で起こることであり、お店側で対策できることはないように感じられます。しかし、わずかな工夫で減らすことが可能です。
食べ残しを少なくするために、次のような対策が考えられます。
・メニューのサイズや価格を見直す
・食べ残しが多い料理のレシピを変えたりメニューから外したりする
・食べ残しを持ち帰りできるようにする
料理のサイズを複数から選べるようにし、価格も相応なものにすれば、お客様は食べきれる量のものを注文するようになるでしょう。
もし、決まった料理で食べ残しが多いのであれば、量や味、見た目などで変更すべきところがあると想像できます。それでも改善しなければ、メニューから外すことも考える必要がありそうです。
また、残った料理を持ち帰れるようにすれば、廃棄量を減らせます。
ただし、この場合も、生ものなどの傷みやすいものは不可とし、持ち帰り後は速やかに食べていただくことを確認しなければなりません。さらに、食中毒のリスクをしっかりと伝えたうえで、最終的な判断は自己責任でしていただくことを伝えましょう。
フードロス削減のメリット
フードロス削減のメリットとは何でしょうか?
メリットを理解することで、フードロス対策により積極的に取り組むことができるでしょう。
フードロスを減らすことがどのようにビジネスに影響するのか、それらのメリットについて解説します。
コスト削減
飲食店のフードロスを減らすことは、何よりもコスト削減につながります。
フードロスとは、仕入れや調理にかかった費用や時間の無駄といえるでしょう。つまり、フードロスを減らすことで、食材原価や人件費を下げられます。
また、フードロスを減らすことで、ゴミの量も減ります。ゴミの量が減れば、ゴミ処理費用も下がるでしょう。
さらに、ゴミの発生源である食品廃棄物を減らすことで、衛生管理がやりやすくなります。当然、衛生管理にかける手間を少なくでき、これも人件費の抑制につながります。
これらによるコスト削減は、飲食店の経営にとって大きなメリットです。
環境保護
飲食店のフードロスは、環境にも大きな影響を与えています。
フードロスを減らすことは、地球温暖化の原因となる二酸化炭素やメタンガスの排出量を抑えることにつながり、水や土地などの資源の有効活用にも貢献します。
これから先、フードロス削減は社会的責任として、当然のこととみなされるようになるでしょう。
したがって、削減努力をすることは、環境に優しい飲食店としてお客様からの信頼につながり、お客様から選ばれる理由になるでしょう。
この記事では、飲食店のフードロス問題について、その原因や対策を解説しました。
フードロスとは、食品が廃棄されることで、経済的な損失や環境への負荷をもたらす現象です。飲食店のフードロスの原因は、仕入れすぎ・仕込みすぎ、保存方法の誤り、オーダーや調理のミス、食べ残しに分けられます。これらの原因を減らすためには、仕入れや仕込みの計画性を高める、正しく保存する、オーダーや調理の精度を上げる、食べ残しを少なくするといった対策が必要です。また、フードロスを削減することで、コスト削減や環境保護につながり、お店のメリットとなります。
これから先、飲食店を営むうえでは避けられないものとして、フードロス問題に取り組んでみてください。