飲食店には繁忙期、つまり忙しい時期というのがあるものです。繁忙期は、売上を大きく伸ばすチャンスですが、同時に様々な課題もあり、気をつけなければならないことがあります。
この記事では、そもそも繁忙期とはいつなのか、売上アップにつなげるには何をしたらよいのかといったことをお話しします。
ぜひ最後までお読みいただき、飲食店経営にお役立てください。
飲食店の繁忙期とはいつ?
忙しい時期のことを繁忙期と呼びますが 、どのお店でも同じ時期というわけではありません。また、繁忙期の売上を最大化するには、自店の繁忙期がいつなのかを把握しておく必要があります。
ここでは、店舗によって繁忙期が異なる理由と、自店の繁忙期を割り出す方法について説明します。
繁忙期は一定ではない
飲食店の繁忙期は、一般的には、忙しい順に12月、3月、4月とされています。これは、忘年会や送別会、歓迎会などの宴会が入りやすい時期であり、外食へのニーズが多くあるからです。
しかし、どのお店でも同じわけではなく、お店の立地や業態などによって異なります。これは、お店の周りの人の流れやターゲット層のニーズがそれぞれ違うためです。
例えば、ファミリー向けのレストランは、春休みや夏休みなどの長期休暇が繁忙期になるでしょう。一方、ビジネス街にあるカフェは、平日の昼間が忙しく長期休暇中は暇かもしれません。
さらに、コロナ禍で繁忙期が変わってきているという現象も起きています。外出自粛や時短営業の影響でお客様の行動や意識が変化しているからです。そのため、通常の繁忙期にお客様が減少したり、逆に閑散期にお客様が増加したりしています。
このように、飲食店の繁忙期は一定ではありませんので、対策をするには自分のお店の繁忙期を知る必要があります。
データを蓄積して繁忙期を知る
飲食店の繁忙期は、立地や業態、ターゲット層によって異なるとお伝えしましたが、どうやって繁忙期を知ることができるでしょうか?
それはデータを調べることです。売上や来客数、客単価などの数字を見ることで、明らかにすることができます。もちろん、感覚でわかっていることもあるでしょう。しかし、同じ売上でも、スタッフが少ないと忙しく感じるということもありますので、正確な数字で判断するようにしてください。
この際、1か月単位で判断するのでは、正確性が低くなるといえるでしょう。というのも、同じ月内でも人の流れは大きく変わるからです。例えば、12月の売上が一番高いお店でも、1週目はそこまで忙しくないということもあります。日ごとの売上を見たうえで、その月の何週目、または何日あたりがピークになるというのがわかるとよいでしょう。
データを蓄積して繁忙期を知ることで、タイミングを合わせた繁忙期対策ができるようになるはずです。
繁忙期の売上アップにつながる対策
繁忙期対策とは、多くのお客様が来店するこの時期に、いかに売上を取りこぼさないようにするかということです。
ここでは、その対策について説明します。
ただし、これらのほとんどは、繁忙期になってから手を打つのでは間に合いません。そもそも、繁忙期に入るとそんな手間もかけられないでしょう。早めに対策を始めるようにしてください。
人員確保
繁忙期にはお客様の数が増えるので、人手が足りなくなることがあります。人手不足になると、サービスの質が低下したり、スタッフの負担が増えたりするリスクが高まります。そうならないためには、早めにスタッフを確保することが大切です。
スタッフを早めに確保する方法としては、以下のようなものがあります。
・閑散期のうちに、スタッフの募集を行う
・繁忙期に入る前に、スタッフのシフトを決めておく
・繁忙期に多く働けるアルバイトを採用しておく
繁忙期には、人員不足のために売上を上げられないという事態も起こりえます。早めにアルバイトを確保し、円滑な業務運営を目指しましょう。
また、スポット求人サービスという、短期間だけ働きたいという人と、短期間だけ人手が必要な店舗とをマッチングさせるサービスがありますので、そのサービスが活用できないか、繁忙期の前に調べておくのもおすすめです。
メニュー調整
調理や提供に時間がかかるメニューをそのまま提供し続けると、お客様の満足度が下がります。また、調理スタッフやホールスタッフの負担も大きくなります。そこで、繁忙期にはメニューを調整するのもよいでしょう。
メニュー調整のポイントは、手のかからないメニューや大量調理可能なメニューに変更することです。例えば、事前に盛り付けて冷蔵庫に入れておける前菜料理や、カレー、シチューなどの煮込み料理などが、オーダーが入ってから提供までの時間がかかりません。
また、一品でボリュームのあるメニューや、シェアできるメニューもおすすめです。これらのメニューは、お客様の満腹感を高めるとともに、調理器具や食器の使用量を減らすことができます。
メニュー調整をする際には、お客様の嗜好や季節感を考慮することも大切です。例えば、冬場は暖かい料理やスパイシーな料理が人気ですし、夏場はさっぱりした料理や冷たい料理が好まれます。
他にも、繁忙期には宴会やパーティーなどの団体客が多くなるお店では、コースメニューや飲み放題プランなどを充実させると効果的です。
メニュー調整をすることで、お客様の満足度を高めるとともに、売上アップにつなげることができます。繁忙期に向けて、メニューを見直してみましょう。
業務効率化
お客様が多く来店すると、少しの作業時間のロスでも積み重なり大きくなります。その結果、お客様の待ち時間が長くなり、不満やクレームにつながる可能性があります。また、スタッフの負担も大きくなり、ミスや事故の原因にもなりかねません。そこで、業務効率化を図ることが重要です。
業務効率化には、以下のようなものがあります。
■POSレジの活用
POSレジとは、注文や会計を自動化するシステムです。POSレジを導入することで、注文内容や金額を間違えるリスクを減らし、スタッフの作業時間を短縮できます。また、売上や在庫の管理も容易になります。
■QRコード注文やキャッシュレス決済の導入
QRコード注文とは、お客様が自分のスマホでメニューを見て注文できるシステムです。キャッシュレス決済とは、お客様が電子マネーやクレジットカードなどで支払いできるシステムです。これらを導入することで、注文や会計時のお客様の待ち時間を減らせます。
■オンライン予約システムの導入
オンライン予約システムとは、お客様がインターネットで予約できるシステムです。オンライン予約システムを導入することで、営業中の電話や来店での予約に対応する手間や時間を省けます。
■在庫管理システムの利用
在庫管理システムとは、食材や備品の在庫量や消費期限などを管理するシステムです。在庫管理システムを利用することで、発注にかかる時間や手間を省けます。また、無駄な発注や廃棄も防げて、コスト削減や品質向上につなげられます。
販促強化
繁忙期には、自然とお客様が来店するので販促の必要がないと考える人も多いようですが、飲食店へのニーズが高いこの時期こそ販促活動を強化することが重要です。普段以上の成果が得られるはずです。
販促活動には、以下のようなものがあります。
■宴会向けの特別メニューや割引設定
一般的に、繁忙期には大人数の宴会需要も高まります。そのため、宴会向けの特別メニューや割引設定を用意することで、お客様に選ばれやすくなるでしょう。また、宴会の予約を早めに取ることで、人員や食材の確保もしやすくなります。
■イベントやフェアの開催
繁忙期には、季節や行事に合わせたイベントやフェアを開催することで、お客様の興味を引くことができます。例えば、クリスマスやバレンタインなどの特別な日には、限定メニューやデザートを提供することができます。イベントやフェアを開催する際には、事前に告知を行うことが大切です。チラシやポスター、SNSやホームページなどを活用して、お客様に情報を伝えましょう。
■ポイントカードやドリンクチケットの配布
繁忙期には多くのお客様が来店しますが、一度だけの来店とならないよう、リピーターにすることも目標にしましょう。ポイントカードやドリンクチケットなどの特典を渡すことで、お客様にすぐに再来店してもらえる可能性が高まります。また、口コミや紹介などで新規客も増やすことができます。
衛生管理の徹底
繁忙期には、忙しいために手が回らなくなり、食中毒や感染症のリスクが高まります。衛生管理は、常に心がけるべきことですが、特に繁忙期には細心の注意が必要です。お客様に安全でおいしい料理を提供することで、リピーターを増やすことができます。
衛生管理を徹底するためには、以下の点に注意しましょう。
■清潔な店内環境の維持
店内は常に清掃し、消毒液や除菌シートなどを用意しておきましょう。また、テーブルやカウンター、メニュー表なども、お客様が触れるたびに拭いてください。
■食材管理と調理マニュアルの整備
食材は消費期限や保存方法に注意し、冷蔵庫や冷凍庫の温度管理もしっかり行いましょう。また、調理マニュアルを作成し、食材の洗浄や加熱などの工程を明確にしておくことも重要です。
クレーム対策
繁忙期には、忙しくてミスが起こるなどで、クレームが発生しやすくなります。クレームは、お店の信用を失わせるだけでなく、スタッフのモチベーションを下げる原因にもなります。そこで、繁忙期に備えて、クレーム対策を行うことが重要です。
クレーム対策の第一歩は、クレーム処理マニュアルを策定することです。クレーム処理マニュアルとは、クレームが発生したときに、どのように対応するかを明確にしたものです。マニュアルに含める項目には、以下のようなものがあります。
・クレームの受付方法と担当者
・クレームの対応方法や謝罪の仕方
・クレーム後のフォロー
など
クレーム処理マニュアルを作成したら、スタッフ全員に共有し、繁忙期前にロールプレイなどで練習しておきましょう。
また、クレームが発生しないようにするために、店内動線とレイアウトを改善することも大切です。これらにより、料理やドリンクの提供が早くなりますし、ミスも減らせます。
繁忙期に関する注意点
前章では繁忙期対策についてお話ししましたが、これらは、繁忙期の売上アップのためだけでなく、継続的な業績向上にも活用していただきたいと考えています。繁忙期に来店する多くのお客様に、閑散期にも来てもらえるようにすることも重要ということです。「閑散期の来店客を増やすために繁忙期を利用する」くらいの意識を持っていただくとよいでしょう。
そのためには、繁忙期に提供するサービスや商品の品質を落とさないことが大切です。品質を落とすと、お客様のリピート率や口コミ評価が低下し、長期的な売上に影響します。繁忙期は「目の前の作業をこなす」ことで精一杯になり、サービスや商品の品質が低下しがちですが、その後の売上も左右する大切な時期であることを意識してください。
繁忙期対策を計画的に行い、お客様のニーズに応えることで、繁忙期だけでなく閑散期も安定した売上を得ることができます。
今回は、飲食店の繁忙期対策についてお話ししました。
まずは、繁忙期はどのお店でも同じではないので、データを蓄積して自分のお店の繁忙期を知ることが大切です。そのうえで、人員確保、メニュー調整、業務効率化、販促強化、衛生管理、クレーム対策など、様々な対策を行う必要があります。
しかし、これらの対策は繁忙期を迎える相当前に準備をすることが重要です。また、繁忙期に来てくれたお客様を閑散期にも来てもらえるようにすることも忘れないでください。
飲食店の繁忙期対策は、この時期だけでなく、年間を通した売上アップに重要ですので、ぜひしっかりと対策をしてさらなる繁盛につなげてください。